Q&Aのタイトル(含嗽剤編)
 
 


「概要」


 含嗽(うがい)は口腔内を薬液により洗浄することであり、口腔内の清潔を保ち、口腔の粘膜疾患や口腔の術後感染の予防に有効です。うがいに使われる薬液のことを含嗽剤といいます。すなわち、含嗽剤は口腔や咽頭粘膜の消毒、収れん、止血、粘膜の溶解などによる炎症性疾患の治療や予防の目的で用いられ、殺菌消毒薬、抗生物質または抗炎症薬などを主成分として、これに若干の芳香剤などが添加されています。
 剤型としては、水剤、散剤、顆粒剤などがあり、水剤は適量に希釈し、散剤および顆粒剤も用いるときに一定量の水に溶解させて使用します。

Q.うがいでもむし歯予防になるのか?

A.はっきりいって、うがいだけではむし歯の予防にはなりません。そのてんでは、含嗽剤を使ってもあまり変わりありません。むし歯の原因はプラーク(歯垢)ですから、予防するためには、プラークを取らなければなりません。そして、プラークは物理的にこすり落とさなければ取れないのです。そこで、歯ブラシで歯をみがく必要が出てくるわけです。
 そのブラッシングでさえ、“みがいた”つもりが“みがけて”いないことがあり、プラークの取り残しがあるほどですから、ブクブクとうがいをしただけではどうにもなりません。ですから、食事のあとはうがいだけでなく、必ず歯みがきをしてください。しかし、それはしないよりましという程度です。

 
Q.含嗽剤の分類としては?

A.現在繁用されている含嗽剤は、その有効成分に基づいて、ヨード製剤、界面活性剤製剤、抗生物質製剤およびアズレン製剤に分類されます。
 有機ヨード製剤であるポビドンヨードは、ヨウ素と界面活性剤(ポリビニルピロリドン)との複合体で、ヨウ素を徐々に遊離して殺菌作用を現します。ヨウ素は酸化作用により細胞機能を阻害して、全ての細菌に対して強い殺菌作用を現し、真菌、ウィルスにも有効です。ポビドンヨードは有効ヨウ素を10%程度含有する水溶液であり、その持続的な殺菌作用はヨードチンキに匹敵します。刺激性や組織傷害性が低いため、創傷患者へ塗布しても比較的痛みが弱いので、広く用いられています。
 界面活性剤は空気と水、水と油、液体と固体などの表面張力を低下させる物質ですが、臭化ドミフェンや塩化ベンゼトニウムなどは分子中に陽イオンをもっており、陽イオン界面活性剤(陽性石けん、逆性石けん)といわれています。陽イオン界面活性剤は陰イオン界面活性剤(石けん)に比べて界面活性作用が弱く、洗浄力はあまりありませんが、逆に殺菌力が強く、細胞膜に作用して細胞内の重要な構成成分を漏れ出させたり、細胞内の酵素系を阻害すると考えられています。ウィルスや芽胞のある細菌には効果を示しませんが、広範囲に強い殺菌力を示し、刺激性もほとんどありません。
 硫酸フラジオマイシンと塩化ベンゼトニウムを含有する製剤では、抗生物質と消毒薬との両面から口腔内細菌を殺菌しています。硫酸フラジオマイシンは、その化学構造によりアミノグリコシド系に分類される抗生物質で、細菌の発育に必要なタンパクの合成を抑制することにより、殺菌作用を現します。その作用は、グラム陽性・陰性菌、抗酸菌、放線菌などに及びます。
 これらヨード製剤、界面活性剤製剤および抗生物質製剤は、口腔内の消毒や感染の予防に用いるうがい薬です。
 一方、アズレンスルホン酸ナトリウムは、抗炎症作用、抗アレルギー作用、肉芽新生および上皮形成促進作用を有しており、創傷治癒の促進および炎症組織の直接的な消炎を目的として使用されています。すなわち炎症を抑えるうがい薬です。また、この成分に局所性の粘液溶解作用を示す炭酸水素ナトリウム(重曹)を加えた製剤もあります。この作用は粘液をアルカリ性にするためです。

 
Q.その他の有効成分としては?

A.このように、消毒のためのうがいと炎症を抑えるうがい薬に分類できます。いずれのうがい薬においても、抜歯後などの口腔創傷で血餅の形成が阻害される時期には、激しい洗口を避けなければなりません。また、その他の有効成分として、殺菌消毒の目的にアクリノール、オキシドールが、収れんの目的に硫酸アルミニウムカリウム、タンニン酸が、口臭除去の目的に銅クロロフィリンナトリウムなどがあります。

 
Q.口腔ケアでの利用法は?

A.イソジンは強力な殺菌力があり、粘膜への刺激性もあまり強くないことから、口腔内のケアにも多用されています。MRSAに対しても殺菌力が強いとされています。しかし匂いがきつく、好まない患者さんには、オラドール含嗽液や、アズノール水を試してください。レモン水、重曹水、ハッカ水、お茶でも可能ですが、含嗽剤を選ぶより、正しく口腔ケアを行うことが肝心です。

 
含嗽剤の分類
主成分 商品名・剤型 効能・効果
1)ヨード製剤
ポピドンヨード

 

イソジンガーグル
(黒褐色澄明液剤)

咽頭炎、扁桃炎、口内炎、
抜歯創傷の感染予防、
口腔内の消毒
2)界面活性剤製剤
臭化ドミフェン

 

オラドール含嗽液
(赤色澄明液剤)

抜歯創を含む口腔創傷、
咽頭の手術後の感染予防、
口腔内の消毒
塩化ベンゼトニウム
 
ネオステリングリーン
(緑色澄明液剤)
抜歯創の感染予防
口腔内の消毒
3)抗生物質製剤
硫酸フラジオマイシン
+塩化ベンゼトニウム

デンターグルF
(淡紅色散剤)

抜歯創を含む口腔創傷の
感染予防
4)アズレン製剤
アズレンスルホン酸ナトリウム




 

アズノール・ガーグル
(淡青色顆粒剤)
含嗽用アズレン「昭和」
(淡青色散剤)
マズレニンG
(青紫色顆粒散剤)

咽頭炎、扁桃炎、口内炎、
急性歯肉炎、舌炎、口腔創傷
同上

同上
 
アズレンスルホン酸ナトリウム
+炭酸水素ナトリウム
含嗽用ハチアズレ
(淡青紫色顆粒剤)
同上
 



Q.口腔の消毒用のうがい薬とは?

A.口腔の消毒に主眼をおいた製品も、多く出回っています。その有効成分は、大きく分けて合成殺菌剤、界面活性剤、エタノールや生薬などです。
 合成殺菌剤を用いた製品としてはGUMデンタルリンスなどさまざまな製品があります。
 合成殺菌剤を含んだこれらの製品は高齢者や障害者の方、全身疾患のある方といった、歯磨きが困難な人々に、歯周病予防・口臭予防として使用できることができます。就寝前に使用することにより、就寝中の細菌の繁殖を阻害し、起床時の口の中の不快感を改善するような効果も期待できます。
 また、界面活性剤を含んだ製品は歯垢(歯の汚れ)を膨潤、分離させて、歯垢を歯から除去しやすくする効果が期待できます。研磨剤を含まない歯磨きであることから、歯磨きの力が強く歯や歯ぐきを傷つけてしまいがちな人や、長時間磨かなければいけない人などに応用できます。
 エタノールなどの殺菌効果を主体にしたうがい薬としては、リステリンなどがあげられます。
 リステリンは、エタノールに加えユーカリ油、チモールなどの精油抗菌物質、サリチル酸メチルなどを含み、これらの有効成分が微生物の繁殖を抑えます。歯垢の蓄積を抑え、歯肉炎・歯周炎を抑制するなど、多くの効果が認められています。
 生薬を配合したうがい薬は、その殺菌効果や収斂、止血効果などにより、歯周病の病状の抑制などが期待できます。


Q.口臭予防にはどうか?

A.最近、口臭を気にする方が増加しています。
口臭は、起床時や空腹時、また女性の月経口臭や食べ物の摂取による摂取後口臭などの生理的口臭、ストレスによるストレス性口臭や心因的口臭などの精神的口臭、口の中の病気が原因で生じる口腔内口臭や内臓などの病気が原因の口臭などの病的口臭に大きく分けることができます。
 このうち、口の中の病気が原因の口腔内口臭は、歯肉炎や歯周炎などが主な原因となります。これらの病気の原因は口の中の細菌であり、いままでお話ししてきたように、うがい薬はこれら細菌に対して有効であることから、口臭を気にされている方の口腔清掃の補助に、大いに役立つことが期待されます。

たかはし歯科医院


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