Q&Aのタイトル(骨髄炎編)
 
 
「概要」
 
 骨髄とは何かといいますと、骨の真ん中に存在し、血液をつくる能力のある軟らかい組織です。この骨髄は、周りを軟らかい海綿骨という骨で覆われ、さらにその周りは鎧のような硬い皮質骨という骨で覆われています。歯科で心配する下顎骨の骨髄炎とは、この骨髄が後述するさまざまな原因で感染し、炎症が起きてしまった疾患のことをいいます。非常に治りにくい疾患となっていますので、ぜひ専門医(口腔外科)の診察を受けてください。
 
 
Q.慢性骨髄炎って治りにくいの?
 
A.顎骨骨髄炎は、経過によって急性と慢性に分けられます。そのうち、慢性骨髄炎はその病態により、慢性化膿性骨髄炎と慢性硬化性骨髄炎に分けられます。
 顎骨骨髄炎は、歯槽膿漏による感染(辺縁性歯周炎)や、むし歯に続発する根尖病巣からの拡大(根尖性歯周炎)、智歯(親しらず)周囲炎、また抜歯後の感染など、ごく一般的な歯性感染に継続して発症することが多い疾患です。現在では抗菌剤の進歩により、感染の初期である急性期に対する治療法は比較的容易になっていたはずでしたが、耐性菌の増加などや、完治しないまま放置されたりすると、感染による炎症が蔓延し、難治性である慢性骨髄炎の経過をたどる症例が目立つようになっています。
 慢性骨髄炎が難治性である理由として、骨髄病巣内部に膿や腐骨(化膿した骨)、病的な肉芽組織が存在していること、また慢性炎症により骨髄周囲の海綿骨が硬化し、その周囲を厚い皮質骨が覆っている(上顎より下顎で著明)ことなどにより、患部の血行状態が悪いこと、またそのために抗菌剤の全身投与(経口摂取など)では、患部局所の起炎菌に対し有効濃度が得にくいことなどがあげられます。最近増加傾向にあり、耐性菌の増加に加え、バイオフィルム(細菌が分泌物を出して作った膜で、抗菌剤の浸透を妨げる)産生菌の増加が起こっているためと思われます。
 
 
Q.慢性骨髄炎の症状と診断は?
 
A.慢性化膿性骨髄炎の場合、主な症状は感染した顎骨部の痛みと腫れですが、痛みは一般的にそれほど強くなく、腫れも限局性で硬く、圧痛を示します。また、外部に瘻孔(膿の出入口)を形成し、膿がでることが多いです。また、微熱、口臭アゴのしびれ、開口障害を生ずることもあり、下顎では感染による骨の吸収が著しい場合に、骨折を起こす場合もあります。レントゲン写真では、ほとんど常に骨の吸収像(黒い部分)がみられます。また時として、骨の吸収した黒い部分と骨の硬化したスリガラス様の白い部分が混在した像がみられ、腐骨が見られることもあります。  
 慢性硬化性骨髄炎は、長期の感染による炎症が軽快または消失した骨髄部に、多量の骨が形成された病態です。さらに、この慢性硬化性骨髄炎はむし歯に続発した慢性根尖病巣の隣接部に、限局性の骨の硬化を示す慢性巣状硬化性骨髄炎と、骨硬化性の変化がかなり広範囲にわたり現れる慢性び漫性硬化性骨髄炎とに分けられます。
 前者はほとんど症状を示さず、レントゲン写真でたまたま見出されることが多く、原因歯の処置以外に特別の治療を必要としません。後者は、レントゲン写真では、骨の硬化したスリガラス様の白い部分の境界が明瞭なことも不明瞭なこともあります。また骨の硬化像の中に吸収された黒い部分が残っていることもあります。症状としては、一般に軽度〜中等度の疼痛を有し、骨の腫張があり、通常は排膿はみられませんが、まだ化膿性骨髄炎が存続して瘻孔が開口していることもあり、頬の痛みや腫れなどの強い炎症症状を示すものもあります。
 これらのことを参考にして、歯科医でアゴのなかの疾患を指摘され、長期間治療を受け、また抗菌剤を飲んでもアゴの硬い腫れや痛み、歯ぐきからの排膿、または微熱が続くといった症状がおさまらない場合には、顎骨の慢性骨髄炎を疑い、よくご相談の上、専門医(口腔外科)の紹介を受けてください。
 
 
Q.慢性骨髄炎の治療法とは?
 
A.治療法は、大きく薬による治療と外科処置に分けられます。患者さんの侵襲や負担を考え、できれば薬による治療を主体とし、外科処置は最小限にとどめたいとすることが多いのですが、慢性骨髄炎の場合、長期にわたって抗菌剤を投与してきた例が少なくなく、そのためにそれら薬剤に耐性菌が出現して抗菌剤が効きにくいこと、また前述したように患部の血行状態が悪いために、薬物の全身投与では患部局所の起炎菌に対して有効濃度が得にくいことなどから、外科処置に至ることもあるのです。
 最近は、バイオフィルムを溶かすマクロライド系抗菌剤とその他の抗菌剤(すでに長期にわたって抗菌剤が投与されている場合には耐性菌を考慮してニューキノロン薬が望ましい)を組み合わせる治療を数ヶ月と比較的長期に行い、好成績をあげてきています。
 慢性骨髄炎における外科処置の意義は、患部局所における血行障害の改善や停留している起炎物質(腐骨や病的な肉芽組織)の除去を目的とし、生体側の環境を整備することで、抗菌剤などの薬剤効果を増強させ、本来生体が有する治癒能力を最大限に発揮させることを主眼におきます。
 
 
Q.慢性骨髄炎の外科処置とは?
 
A.海綿骨やその周囲の皮質骨が長期間の炎症に反応して硬化している場合には、その硬化した骨の除去を行い、起炎物質である腐骨や 病的な肉芽組織等が存在している場合には、同時にそれらの除去も行います。こうして術後、早期に血行回復をうながすようにします。原因歯がはっきりしている場合には、抜歯をすることも多いです。
 重症の骨髄炎に対して、局所灌流法、つまり、病的な肉芽組織や腐骨を除去した後、口腔外から病巣部内にチューブを留置し、そのチューブから抗生物質を直接病巣部内に注入し、患部局所における抗生物質の有効濃度を高める治療法を行うこともあります。また、骨髄炎の範囲があまりにも大きく、悪化した場合には、アゴの骨の大部分を切除する治療が、やむを得ず行われることもあります。
 外科治療後もしばらくは抗菌剤により起炎菌を叩き、症状が治まることが多いのですが、初回の手術から数年以上たって再発する例もあり、長期間の経過観察が必要です。

たかはし歯科医院


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