おじいさんとおばあさんは貧乏だったので、今日は大晦日だというのに、 お正月に食べるおもちもありません。
「ばあさんや、どうだろう。森でリスをつかまえて町で売りさばき、 そのお金で正月用品をあれこれそろえたら……。」
「おじいさん、グッドアイデア。」
というわけで、おじいさんは森でリスを7匹ほどつかまえてから町へ行きました。
「リスはいらんかねぇ。かわいいリスはいらんかねぇ。」
「リス? うちはジャングリアンハムスターが2匹いるから間に合ってるよ。」
「リスなんかいらないよ。どうせこの時期凶暴だし。」
「うちの長屋、ペット禁止なんだ。」
誰もおじいさんのリスを買ってくれません。
結局1匹も売れずに日は暮れてしまい、帰り道、売れ残ったリスを持ち帰っても始末に困るので、 おじいさんは道ばたにいた7体のお地蔵さんにあげることにしました。
「お地蔵さん。責任を持って飼ってくだされ。」
「おじいさん、おもちはどこですか。」
おばあさんはおじいさんが手ぶらで帰って来たのを見ておどろきました。
でもおじいさんがわけを話すと、
「それは良いことをなされた。これでお地蔵さんたちも寂しさが紛れるでしょう。」
とたいそう喜びました。
翌日、元旦の早朝です。
ドスン、ドスンという音でおじいさんとおばあさんは目を覚ましました。
きっと近所で地盤固めの工事でも始まったのかと思った二人ですが、 その音はだんだんこちらに近づいてきて、そして二人の家の前でピタリと止まりました。
おそるおそるおじいさんが玄関の戸を開けると、そこには昨日のお地蔵さんが7人並んで立っていました。
「おじいさん、昨日はリスをありがとう、と言いたいところだけれど、 実はこっちはえらい迷惑なんだ。ほれ、このとおり。」
お地蔵さんが広げて見せた両手にはバンソウコウがたくさん貼ってありました。
「リスがこんなどう猛な動物とは知らなんだ。頼むから、こいつらを引き取ってはくれないか。 ただでとは言わない。もしリスどもを引き取ってくれたらこのごちそうをあげよう。」
お地蔵さんたちは手に手に持ってきた、餅、米、味噌、酒、魚、野菜、各種調味料等の生活必需品を 惜しげもなく、雪の上に広げました。
「まあ、そういう事情なら……。」
おじいさんは心の中でしめしめとほくそ笑みながら、それらを受け取りました。
お地蔵さんたちがドスンドスンと帰っていったあと、おじいさんはリスを全部森に放してしまいました。
「来年もたのむぞ。」
と、声をかけたとか、かけなかったとか。