昔あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは森で野生の果物を集めるのが職業で、おばあさんは専業主婦でした。
「ばあさんや、それじゃちょっくら行ってくるよ。」
「気をつけて行きなはれ。」
おじいさんがいつものように森へ行くと、1本の木の枝に何やらキラキラとまばゆく光る ものが見えました。
「お金?」
どきどきしながらおじいさんが近づいて見ると、それは内側から光を放つひとつのリンゴ の実でした。
さっそくもぎ取ったおじいさんの手のひらの上で、そのリンゴはぬんめりと暖かく、かす かにもぞもぞ動きました。
おじいさんはその光るリンゴを眺めているだけで、何だかとっても幸せな、不思議な気持 ちになりました。
「食っちゃおうか。」
帰っておばあさんにも見せてあげようかとも考えましたが、そうするとおばあさんは半分 よこせと言うに決まっています。
長年連れ添って、おばあさんの性格は知り尽くしているおじいさん。
「ここで食っちまって、ばあさんには黙っていよう。うん、そうしよう。」
おじいさんはたまたま持参していた果物ナイフを抜くと、ばっさり光るリンゴに差し込み ました。
「ちょっと、危ないじゃないの。もう少しでけがするところだったわ。」
なんと、リンゴの中からは小さな小さな、20グラムにも満たないほどの赤ちゃんが出て きて、おじいさんに向かってませた口をききました。
「す、すまん。そんなつもりじゃ……。」
「ま、いいわ。それより何か食べるものない? リンゴの中でリンゴの種ばかり食べてた ら、さすがに飽きちゃった。落花生でもないかしら。」
「そんな高価なもの、誰かの結婚式か葬式でもなきゃ食えないよ。」
「お金ならあるじゃない。ほら、そこに。」
赤ちゃんの指さす方向には、赤ちゃんが入っていたのと同じ光るリンゴの実がひと つだけぶら下がっていました。
おじいさんがふたたびもぎ取って、怒られないようにそっとナイフで割ってみると、今度 は中からキラキラ輝く小判が出てきました。
「誰の小判だろう。」
「あなたのよ。」
不思議なことはその後も続き、その日以来、おじいさんが森へ入ると、かならず光る小判 入りリンゴがひとつ見つかるのでした。
やがて、おじいさんの家はたいそうなお金持ちになりました。
そして、おじいさんの家で育てられることになった赤ちゃんは、リンゴからうまれたので 『リンゴ姫』と名付けられました。
(つづく)