試着室ではありません


翌朝、リウは近所の量販店で厚手のカーテンとミシンを買いました。
ヨヒョウは驚きました。
カーテンを見て、ピンときたからでございます。
「リウ、そなた、まさか……。」
「その、まさかです。」
「しかし、そんなにうまくいくものだろうか……。」
「リウならできます。」
「でも、カーテン地から服を作るのは、そんなミュージカル映画もあったから、 まだできないことではないにしても、それを毛皮に見せることが、そなたには、 本当にできるのかえ。あの金持ち女が、そんなに簡単にだまされるだろうか。」
リウは、ちょっと怒った顔で、ヨヒョウをにらみつけました。
「バカなことを言うものではありませぬ。どうして布のカーテンが毛皮のコートになりようか。」
リウの大きな目に見つめられて、ヨヒョウは内心、少しだけ嬉しくもありましたが、それでも、 リウの考えていることがまるでわからず、少々たじろぎました。
「それはそうだが……。」
「そんなところにぼんやりと立っていないで、カーテンを下げるのを手伝ってくだされ。」
ふたりは協力して、天井からカーテンをぶら下げ、部屋の隅に、遮断された小さな空間をつくりました。
「ここに何をしまうのじゃ。」
「リウが入ります。」
ヨヒョウは慌てました。
「そ、そんな、寂しいことを言わずに、オレに不満があるならそう言ってくれ。話し 合おうではないか。まだ一緒に暮らし始めて何日も経っていないのに、もう家庭内別居とは……あんまりだ。」
「そうではありませぬ。この中でリウがコートをつくります。」
「どうしてこの中で。」
「それは……言えませぬ。」
リウは、「それは」の後に2秒間ほど間を空け、ゆっくりとうつむながら「言えませぬ」と言いました。
リウのいつになく沈んだ声に、ヨヒョウもそれ以上を問うことはためらわれました。
「お前様、ひとつ、お願いがあります。」
20秒後、リウは顔を上げ、真剣な面もちで言いました。
「オレにできることなどほとんど何もないが、それでもできることなら何でもするから言ってくれ。」

つづく