お前がそんなんだから、オレはいつも──
 いつまでたっても。
 ……お前が、そんなんだから。

「おっと」
 ――ずる、と音を立てて転びそうになった十代目を、オレが『あっ』と思った時には、既に入江正一が両腕で受け止める所だった。
 のやろー……。
「あ、すみません」
 普段はすこぶるトロ臭ぇ癖に、こと十代目の事となると常にオレより半歩早い眼鏡ヤローは、今日も十代目の前でだけは出来過ぎなくれぇに完璧絶好調だった。オレがその眼鏡の背中を、この上なく呪わしい目つきで睨み上げて居ると、十代目が、その小柄なお体をすっぽりと包み込むように抱き留めた男の腕の中で、パッと顔を赤らめ、目線を上げるとあたふたとぎこちなく礼を言った。……明らかに、はにかんで。あぁ……ったく、何て勿体ねぇ……。
 ――詫びる事なんかねーっスよ十代目、そんなヤツ踏み潰したって悪いと思ってやる必要なんか――と言おうとして、オレは咄嗟に口許を押さえた。危ねぇ、……またやっちまうトコだったぜ。気に入らねぇのはいつだってMAXだったが、コイツにキツく当たっと、バカがうるせぇんだよな。……それに、やっぱ十代目にも、たまに怒られっし。
「危ないよ、気を付けて。今度、あまり床が滑らない工夫を考えてみようか。あ、それとも、滑りにくい靴を開発してみる?」
「え。いえ、そんな……オレがもっとちゃんとすれば良いんであって、入江さんにそんな面倒は――」
 ……そうですよ、十代目。そんなヤツを頼る必要なんか、全くありません。いつだってオレが、……右腕のオレが──。
「やだな、面倒だなんて。水臭い事言わないでよ、綱吉くん」
「え、あ──うん、ありがとう」
「ふふ、どういたしまして。でも、本当に気を付けてね」
 ……コイツ、オレが大目に見てやってりゃぁ、とことん調子に乗りやがって――。二人の間に、割って入れない空気が流れれば流れる程、そしてその空気が色濃ければ色濃い程、オレの苛付きは増すばかりだった。
「――」
 !
 がるるるる、と、唸り声を上げんばかりの形相で飛び出しそうになったオレを、すっと体ごと視界を遮断する格好で前に出て牽制したのは、野球バカ……山本武だった。こちらを視線でチラと振り返ると、その目がオレに向かって『まぁまぁ』と言って居る。
「……」
 別に、オレは何にもしてねぇだろ。腹ん中でそう拗ねるように独り言い訳がましく呟いていると、ふっと緊張を緩めたその背中が、オレにいつものように笑った気がした。
 ……ちっ。まぁ、……な。
 流石に、いつもの事だった。十代目が眼鏡ヤローに甘い顔すんのも、それにオレがキレそうになんのも、そしてそんなオレをコイツが止めんのも。それら何もかもが当たり前みてぇに、日常になりつつあった。いつも言われて居る。いい加減お前は入江にキツ過ぎだと。十代目にも子供が叱られるように何度も嗜められて、――それが気に入らねぇのは、言うまでも無かったが、別に――本気で分かんねぇ訳じゃ、ねぇさ。いくらオレだって、もう――十代目が入江のヤローをどんだけ大切に思ってらっしゃるかなんて事は、絶対に認めたくなくても、分かって居る……つもりだった。ただ、――十代目が何気なくアイツに見せる、態度や表情の何もかもが、羨ま……いや、無ぇ。たとえ天地がひっくり返ろうとも、オレがアイツを羨むなんて事は、ある訳が無ぇ。……そうだ、やっぱりオレは、ただ単に入江の事が無性に気に入らねぇってだけであって、……。
 ――って、ぅぉ!?
「……」
 気が付くと、オレの前を歩いて居た筈の十代目は、入江のヤローと二人で忽然と姿を消して居た。
「くそっ、入江のヤツ、また十代目を引っ張り回しやがって――。……あぁ? っだよ!?」
 ――不意に、冷めた目でオレを見下ろしくさって居た野球バカが、声を殺してくくくく、と笑いを堪えているのに気付く。何だオレはもしかして、無意識の内に今考えて居た事を、ずっと顔に出しちまって居たのか?
 ──あーあ。
 オレはバカバカしくなって、……でもどうにも腹の虫が治まらずに、くわえたタバコを噛みちぎりそうな程ギリギリと歯ぎしりしながら、ずかずかと足音を立てて歩いた。

「良いよなー、ツナは。オレも優しくされてぇのなー」
「……はぁ?」
 二人して部屋へ戻ると。ベッドに勢いよく腰を下ろした野球バカが、そのままごろんと背中から倒れて、天井に向かって吐き出すように呟いた。何だこの野郎、オレが優しくないとでも、……あぁまぁ、そうだろーがよ、……ちっ。
「じゃぁお前が眼鏡野郎とつきあえば良いじゃねーか。そしたらきっと、十代目だって……」
 あんなヤローに、あんな風に。
 ……。
 オレ、何言ってんだ、──はたと我に返る。苛立ち混じりに口走っちまった言葉を、オレが半分後悔し掛けた、その瞬間。武がこちらを、真顔で見上げた。
「お前、もしオレがあの人と付き合ったら、ツナと付き合うのか?」
「んなっ……じゅっ、十代目が、オレなんかに……!」
 いやっ、違っ、……そうじゃねぇぞ、問題はそんな事じゃねぇだろ、オレ……とお前っ!
「もしお前を好きになったら、ツナと付き合うのか?」
 だぁっ、……。
「……っ……。──おめーは、んなコトがあると、本気で思うのかよ!?」
 思わず言葉に詰まりつつ、息継ぎをするようにやっとの思いで吐き出した、オレの言葉に。
「……」
 しばらく思案する素振りで、バカはゆっくりと、その視線を宙空に彷徨わせる。
 ──つかコイツ、言うに事欠いて何て事ほざきやがる……オレがお前以外の誰かを……ってよりお前、あんなヤツと本気で、……あぁ何考えてんだオレはマジで、こんにゃろう!!
「なー、隼人」
 ふっと、息を吐き出すようにオレに呼び掛ける、バカの間延びした声。
「あ゙ぁ゙っ?」
 ……オレはイライラが爆発して、顔も見ず吐き捨てるように怒鳴り返した。……が。
「……ごめんな」
 ――。
「……」
 暴走し掛けたイライラが、そのゆるゆると幸せそうな一言が響くと同時に、砕けて消える。何をコイツは――と、靄付いた気分で視線を向けると、バカはバカ面を全開にしてオレの手を引こうと、半身を起こして、その長い腕をこちらへ向けて差し伸べる所だった。そしてその瞳が、オレを見てやけに甘く微笑んで居るのを見返したら、……。
「――はぁ」
 怒る気が、完全に失せた。
 ――ったく……こんの、バカ野郎。

「あ。そう言やさ」
「……?」
 気怠い、痛みの余韻と眠気が争うように襲って来る混濁した感覚に、シーツの上を漂うような気分で。オレを抱く腕に身を任せて居ると、不意に現実へと引き戻すような口調で語り掛けた武のバカを、──オレは半ば忌ま忌ましい思いで斜に見上げた。……ったく……コイツにはデリカシーってモンが無ぇのか。いっつもいっつも微妙な雰囲気の時に思い切り水差しやがって。
「オレさっき、廊下でこんなモン拾ったんだけどよ」
 ……?
「!!!!!!」
 オレは思わず二の句を失った。
「お前、それは――」
 ごそごそと、脱ぎ散らかしたジーパンのポケットから取り出されたものは、ピンポン玉をくしゃっと軽く潰したくらいの大きさの、綺麗なエメラルド色をした不格好な形の塊だった。
「……ん?」
 オレはその輝きに見覚えがあった。
「何か、綺麗ぇーだろ? 石かなんかだと思うんだけどよ、誰かの落とし物かなと思って……隼人?」
 ……間違いない。オレはバカの言葉も耳に入らない勢いで、その淡く光る小さな緑色の塊に見入って居た。
「お前、これは――」
「うん? あぁ何だ、お前のだったのか。こんなモン一体どこで――あぁ、元々持ってたのか?」
「バカ野郎! オレのモンな訳無ぇだろ! お前これは――」
「へ?」
 オレは我が目を疑ったが、しかし絶対に間違い無ぇと言い切れる。
「これは、この時代に初めて発見された、伝説の植物、『星間樹』の種だぞ!! 何でこんなモンがこのアジトの中に……いや、それよりもこの種はまだ世界で5つしか見付かって居ない上に、どれも発芽に成功してねぇんだ。――でかしたぞ野球バカ! もしこれが上手く芽を出すような事があれば、世紀の大発見だ! って……おい?」
「ん? あぁ、そっか。良かったな! じゃぁ試しに芽が出るか蒔いてみっか?」
 なんだか知らねぇが、気圧されたように言葉を失って居た野球バカが、ふと我に返ると、そう提案した。
「いや、……この時代の学者が、手を尽くしても芽が出なかった種だぜ。一筋縄じゃぁ行かねぇだろう。ボンゴレの科学力を駆使しても、成功するとは限らねぇ」
 オレはブツブツと、半ば独り言のように呟く。一体どうしたら上手く発芽させられんのか、 ――大体、オレは草や木なんてものは幼い頃に庭師が手入れしてんのを邪魔して悪戯したくれぇしか身近に感じた覚えも無ぇし、確かコイツも小せぇ頃に宿題で朝顔を育てたくらいしかやった事が無ぇと、言って居た気がする。とすると、ここは誰かそう言うのに詳しい人間に聞くしか――。
 !
「そう言や、芝生頭のヤツ、最近花を育ててるとか何とか言ってなかったか?」
「ん、確かに……ちょっと前にそんな事言ってたような気もするな」
 ……しかし、芝生か。気は進まねぇが……仕方ねぇか。贅沢ばかりも言ってられねぇしな。──よし。そうと決まれば。
「善は急げだぜ。行くぞ、武!」
「え、――あ、あぁ!」
 小さく驚いたように目を丸くした野球バカが、何だか嬉しそうに立ち上がるのを尻目に、オレは手早く身支度を整えると、足早に目的の男を訪ねるべく、部屋を後にした。

「おい芝生、入るぜ」
 そう言って、オレは半ばドアがある事に意味がなくなっている、ボクシングバカの部屋へと立ち入った。
「ちわース」
 同時に野球バカもその敷居を跨ぐ。あのバカ一直線の脳みそ筋肉男は、自分の部屋に鍵など要らんと言って、いつも部屋へ入る時はノックも不要だと豪語している、珍妙な生き物だった。別にそれで言いと言う以上、文句を言うヤツも居なかったが、だったら廊下ででも寝たらどうなんだよ、と、オレはこうしてここへ来る度に本気でそう思う。ちなみにオレはコイツに用なんざ、普段は殆ど無ぇ訳だが、リボーンさんの方針で、アジト内の非通信連絡事項は持ち回り当番制になって居て、嫌でも各自の部屋を訪れる機会があるのだった。十代目も『それで皆が仲良くなれるのなら』と、賛同しての事らしいから、──右腕のオレが(いっっっっくら不本意でも)、不服を零す訳に行かねぇだろう。
「おぉ、山本にタコヘッドではないか! どうした、――いや、良い。わざわざ言わんでも、貴様らの言いたい事は分かっている。オレと一緒に極限トレーニングに励みたいと言うのだな!」
「ちげぇよ!」
「あっはは、センパイ相変わらずだぜ」
「む!? 違うのか!? ではとうとう敵でも攻めて来――」
「それもちげぇ! これだこれ、これを見ろ芝生頭」
 ――あぁ面倒くせぇ、やっぱコイツを頼るなんてのは無茶が過ぎたんじゃねぇか、……そう軽く後悔しながらも、オレは大切に掌で包むようにして持って居た伝説の植物の種を、そっと指を開くと芝生に向かって差し示した。
「うむ、極限にこれは何なのだ? これを使ってどんなトレーニングをすれば良いと言うのだ」
「笹川センパイ、これはオレが拾ったんですけど、トレーニングとかは関係ないッスよ。獄寺が、何か珍しい種だってんで、芽を出させる方法、聞きに来たんス」
「――へぇ」
「のわっ!」
 野球バカが芝生頭にも分かるように用件を告げると、不意に部屋の奥から姿を現してオレを驚かせたのは、入江正一だった。
「なっ、眼鏡ヤロー、テメェ一体ここで何してやがる――」
「あぁ、本当にこれは珍しいものだね。山本くん、これをこの建物の中で拾ったの?」
「え、あぁはい、そうなんスけど」
「おいコラ、聞けよこの――」
 全くオレを気に掛ける気配の無い入江に、ブチ切れそうになった、その瞬間。
「ご、獄寺くん、オレも居るんだけど……」
「なぁっ、じゅ、十代目! 何故こんな所に!?」
 そろそろと、こちらを伺うように進み出たのは、オレの大切なボス、その人だった。
「ちょっと前に話題になった、大昔の隕石と一緒に降って来たかもしれない地球外の植物と言われて居る種だろう? 何でこんな所にあったんだろう? またランボさんかな……やっぱあのモジャモジャ、一度研究させて貰うべきだと思うんだよな、でも中々素直に見せてくれないし、どうしたもんだろ……」
 ――あぁもう……何でコイツはこう、興味を持った事には食いつくが、周りを一切全くこれっぽっっちも見ねぇのか。そんなんだからいつも十代目が大層ご苦労を……。やっぱいっぺんブッ放すか。
「えぇと、入江さんとお兄さんが、晴の炎の実験をしていたんだよ、獄寺くん。オレは炎の属性の事を勉強出来るかと思って、見学に来てたんだけど」
「十代目……」
 あははは、とぎこちなく笑いながら、オレの優しいボスは説明して下さる。なるほど……流石は十代目だぜ。勉強熱心でいらっしゃる。
「でも多分、この調子だと――」
 そう言って、十代目がチラ、と視線をくれた先では、既に筋肉バカ共と入江のヤローがワイワイと緑色の種を囲んでいる。
「よし、じゃぁちょうど実験中だったんだし、ちょっと晴の活性で発芽を促す事が出来るか、試してみようか、了平くん」
「おぉ! 極限に任せておけ! 楽しみにしておれよ、タコヘッド!」
「なっ……」
「――ほらね」
 そうして困ったように小さく息をつきながら、十代目が呆れたように笑った。

『さて、じゃぁ今日はこの辺にして、皆そろそろ食事にしようか?』
 そう言って、入江が解散を宣言したのは、オレ達が芝生の部屋を訪れてから、優に6時間は経過した頃だった。
 結局、データを取りながら少しずつ炎の出力を調節して、数値が安定した所で炎の照射を維持する為の装置を起動し、様子を見る事になった。
 野球バカと十代目はいつの間にか眠り込んで居て、オレと入江で二人を連れ、芝生頭の部屋を出た。そして皆で遅い夕食を済ませて、オレ達はまた二人、部屋へと戻って来て居た。
「……」
 あの種は、この時代の月刊世界の謎と不思議によれば、生きた宇宙人が姿を変えた物じゃねぇかと言う説もあるらしい。もしそれが本当なら、オレはこの目で宇宙人を――。
「あん? お前そう言えば、さっきもそうだったがメシの間もずっと笑ってやがったな、何だよ?」
 不意に、オレは床に座り込んでオレを見ながらニヤ付いて居る野球バカに気付き、仏頂面になった。どうせまたオレが宇宙人とか信じてんのが可笑しいとでも言うつもりか。これだから神秘ってヤツが分からない無神経は……あ、いやしかし、宇宙人云々説は、まだコイツに話してなかったっけな。
「……だってよ」
「あー?」
「何か嬉しくなっちまってな」
 ……嬉しい?
「さっき言ってただろ、ツナがお前の事好きになったって、お前は――」
 あぁ……? まだあんな話引きずってやがったのか。オレは思わず呆れて『バカか』と呟きそうになったが。
「誰がお前の事を好きになったとしたって、絶対にオレだけのモンなんだろ?」
「……ブッ!」
 ――続いたその言葉を正確に理解して、そしてそのあまりの発言に、オレが反射的に何かを吹くまで、しばらく時間が掛かった。こ、……コイツ、今何を…………。
「しかもさ、お前はオレに、『お前はどうなんだ』って聞かなかったろ? それって、オレの事を信じてくれてるって思っても、良いんだよな」
「……!」
 そうだ、……置き去りになって居た、その問題。オレは不意に、何か引っ掛かって居たと言うその事実を思い出し――。
「思い上がんなよ」
「え?」
 そうだオレは、確かに『お前が他のヤツと』――なんて事を、微塵も考えやしなかったが、いやそれ自体も相手がコイツでなきゃきっちり問い質したい所だが、それ以上に、お前は――。
『オレを信じて、居なかったんだろう』
「……」
 言葉にしないまま、その思いが頭の中ではっきりと形になった瞬間、ずし、と音を立てて心臓に重石がのし掛かるような感覚に苛まれる。
 ……お前は――。
「……隼人?」
「オレは、誰か別のヤツにフラフラ目移りするって、お前が思うようなヤツなんだろ。そんなヤツにどう思われようが、アテになんかなんねーって分かんねー程、テメェはバカなのかよ」
「……隼人」
 顔は、背けたまま。その声を聞くのも、今はイライラする。
 ――パシ。
 頬に向かって伸ばされた手を払いのけると、バカが戸惑って少し俯くのが、分かった。
「もしかして、怒ってんのか?」
「――別に」
 ……ふわ。
 !
「悪ぃ」
「――」
 前触れも無く、オレが抵抗する気力も起きない程に優しい力でオレを抱き締めた、その腕。その柔さに虚を突かれて息を飲むと、いつになく誠実な声が、オレの耳元で呟いた。
「悪ふざけ、しちまったかな――オレを、試すような事言ってんのかと思って、お前の事いい加減に考えてるみてぇな事、言っちまった。そうだよな、オレ……隼人」
 ――ぎゅぅ。
 言って、切なげに力を込めて、食い込みそうな程にオレの体を締め付ける、武の腕が。
「……オレを」
 震えんな。
 ……震えんなよ。お前がそんなじゃ、オレは、……。
「信じろって、言ったよな」
「……」
 ――コク、と耳元で小さく頷くのが分かる。髪が擦れて耳をくすぐる音が、ざらざらとノイズのように聞こえて。
「別に、……信じてねぇ訳じゃねぇさ。オレがお前を疑う筈無いだろ? ただ少し――お前がオレを試すなら、お前はどうなんだろうって、確かめて……みたくて」
 言いながら、猫が擦り寄るように頬を寄せる、お前。オレは、――。
「はや、――!」
 ――ぐい、と胸倉を引っ掴んで懐へ潜り込む。そうして噛み付くように奪い取った口づけを、……お前は。
「……んっ」
 ……思考が、途切れた。んだよ、これ――この、やろう。
「ん、……んん、……」
 ――はぁ、……。
 俯く唇をまた上向かされて、そうして何度でも、繰り返し。
 ……何の事はねぇ。
「オレ以外は、有り得ねぇんだろ?」
 ──……オレは。
「は、……」
 言葉に、したら。
 その瞬間から、オレを信じられなくなると言う、茶番。
 それならもうお前の事なんか、──。
「信じて、やらねぇからな」
 ……息を継ぐ合間に、絞り出す。オレの──。
「……良いぜ」
 耳元で囁くお前が、理解して居る事。
 ……二度目は無ぇ。
 そうなる前に、オレを攫う、……そして、そうはならないと、その両腕で痛い程に誓う──。

「隼人」

 口づけながら、笑う。
 熱い程に焼け付く太陽のような、お前のオレに向ける、
 ──全てが。
 深く口づけながら、その指が、……。
「あ」
 ……お前、さっきもオレの事、──。

 まるで、頭痛の種だ。
 居ても居なくても、いつもお前がオレを振り回す。
 そんなお前だから、オレは──。

 ……きっと、いつまでも。