シンガポール滞在日誌 BACK NUMBER(3/30-5/18)



シンガポールの地に降り立ってからはや3ヶ月が経ち、日常生活にほとんど違和感がなくなっている自分に気づきはじめた。以前から一人旅(バックパッカー)をはじめちょくちょく海外に出ていたし、「食べる・寝る・出す(いわゆる用足しです)」はどこでも変わりなくできる性格なので、時間の問題だったんだけど、これではもったいない。

何がって、せっかくの体験を自分の記憶の片隅に留めてしまう事が...!?

...なんて大袈裟な事を言ってしまうと筆が「ぱったり」と止まってしまうので、気楽にいきます。だから、気軽に読み流して下さい。(1997.3.30)


Bai Neow Li Zi(5/18)
軍隊(5/18)
アマさん(5/11)
たばこ(5/11)
謎のコップ(5/4)
地震・カミナリ・夏・おやじ(5/4)
日本人と韓国人(4/27)
さすがは世界No.1(4/27)
セミの鳴き声(4/20)
便利な日本語(4/20)
甘いアイスティー(4/13)
チキンライス(4/13)
Yuniさんのシンガポール・スリング(4/6)
タクシーの「生活臭」(4/6)
カパカパ(capa capa)(3/30)



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5月18日

<Bai Neow Li Zi>

日本語名「白鳥麗子」の中国語読みである。語尾が4種類(1:直、2:上、3:下上、4:下)あるので、「Bai(上) Neow(下上)Li(下)Zi(下上)」とでも表記した方が正しいかもしれない。この名前どこかで聞き覚えがある人も多いはず。そう、人気漫画をTVドラマ化した「白鳥麗子でございます」の主人公のことである。シンガポールのテレビでも、中国語に吹き替えられて人気を博しているのである。

この手のドラマは、JAPANアワーなんかで日本語のままお目にかかる事も多いし、アニメとかは日本のものが中国語で放送されている場合の方が多い。「白鳥麗子」の場合、元がマンガだからか吹き替えでもあまり違和感を感じない。日本人以外の視聴率も高いみたいだし、NHK連続テレビ小説の「ひらり」や「スイートホーム」、「セーラームーン」などなど日本でも評価が高かったものが放送されることは、今の日本を理解してもらうのにいいことだと思う。

そう考えると、ここにいて「地元」で作られたTV番組を見ないのはもったいない。日本で見る機会はほぼ皆無だろうし、この地区の人たちの「関心の所在」がよくわかるからである。それに加えて、例えばシンガポールですべて撮影している「999」という刑事番組は、「天然もの」の「シングリッシュ(シンガポール人英語)」で繰り広げられているので、ストーリー以上に楽しめる。この会話がしっくり「耳に馴染む」ようになったら恐い気もするけど...

僕が知っている範囲では、英語(含むシングリッシュ??)で主に放送しているチャンネルが3つあり、中国語中心が1つ、マレーシア語が2つある。もっとも、マレーシア語とタイ語の区別すらつかないからいいかげんな分類ではあるが、日本語・英語以外がたくさん放送されていることは間違えない。特に面白いのがその「マレーシア語」放送のTVドラマ番組である。

言葉はさっぱりわからない。字幕スーパーも通常3カ国語。一番下に英語訳が小さな字で出ている。洋画の日本語の字幕スーパーですら集中してないとわからなくなってしまうこともあるし、逆に集中しすぎて肝心のシーンをはっきり見なかった、なんて経験を持っている人もいるはず。その英語版なんて、きちんとフォローできるはずないが、でも内容はちゃんと理解出来る。ストーリーがシンプルで「昔みたような」内容だからである。

例えばマレーシア版(インド版かもしれない)月光仮面。悪人に襲われている年の頃なら二十歳の娘。必死にかばう母親だが、悪男との力の差は歴然としていてどうしようもない。サリー(インド人の民族衣装)に手をかけられてピンチの「小娘」。その場面に平行して流れる暗闇を猛スピードで駆け抜ける勇者の姿。あー正義の味方だー!早く助けてあげてくれー!と手に汗握る場面。

でも、よく見ると「勇者」のまたがる乗り物は「牛」。水牛みたいだが暗くてよく分からない。「猛牛」というぐらいだから迫力はあるし、宗教上「神聖な」性格を持ち合わせているからかもしれないが、なんとなく「のーんびり」した雰囲気。未舗装の道路を突っ走り、正に危機一発のタイミングで、犯行現場の「竹細工」の窓へ「聖牛」から飛び込んで、悪者を突き飛ばした。勇者の見事な解決に拍手である。

日本でだいぶ前に「赤い糸シリーズ」とかいって山口百恵が白血病とかにかかるドラマがあったけど、その「こちら版」もよかった。舞台は田んぼにあぜ道がひろがる田舎。そこで親子6人が楽しく生活している。お母さんが元気だとみんなうれしくなるー、という内容の歌が、サウンド・オブ・ミュージックの「ドレミの歌」的乗りで展開する。アジア的な田舎の風景で、「はだし」に「民族衣装」、「家畜」がマッチしている。家族も隣近所も幸せで包まれている。

しかし、不幸はお父さんの「酒癖」で訪れた。普段はおとなしいのだが、一度酒を口にすると狂暴になり、仲間や隣人、家族にも手を上げるようになる。それにたまりかねた人々や諸先輩が彼に酒を控えるように説得するが、自分の稼いだ金で飲んでいるんだから文句いわれる筋合いでない、と一切耳を貸さない。結局、恨みをもった隣人がけんかの復讐にその男の子供をトラックで跳ね飛ばしてしまう。

駆けつけた母親が、子供のために自分の血を提供しようとするが、そこで意外な事実がわかる。「がん」、しかも末期がんを宣告される。はじめは、もちろん本人ではなく彼女の父親に告げられ、場所を変えて父から娘に。その告知場面が圧巻。父が真相を語った直後、「がーん」という音とともに、小高い丘にそそり立つ巨木を背にした彼女のズームを引いて、斜め上空から360度回転させて、ショックに歪む彼女の顔を写しだす。まさに心の動揺を素直に表現しているのだが、その一回転しているはずの風景がどの方角も同じ。見渡す限りの水田で、一切高い建物はない。

思わず涙を浮かべてしまう。同時に、日本でこれだけの景色を探すのはむずかしいだろうなー、と妙に感心したが、それ以上に舞台がこれだけ違っても「感性」がこれだけ理解しやすいのにも感動した。この後、この事実を知った「おとうちゃん」は、心を入れ替えて酒をやめ、「おかあちゃん」の為に家族全員で祈とうの旅にでる。各地の有名な寺院でお祈りをささげる姿は、日本の「お百度参り」に通じるものを感じる。

「Xファイル」とか、「星の金貨」もいいけど、「純粋感性」を「天然素材」で素直に表現している番組に出会い、いかに「人工的」に「加工」されたものを目にしているのかがよくわかる。どちらが「いい」「悪い」ではなく、「天然物」と「人工物」の違いがわかる「目」を持ち続けたいものである。

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<軍隊>

日本でも憲法施行50周年ということで、「第9条」に関するアンケートとかが新聞紙上で論じられていたが、シンガポールにも軍隊はある。しかも徴兵制まである事実は、日本では意外と知られていないと思う。シンガポール国籍で20歳を迎える男性は、皆2年間の兵役が義務づけられている。

これがシンガポールにおける男女差を生み出している、という説もある。せっかく学生時代に努力して同じ学校を卒業しても、社会に出る、または戻るのが2年も違うと、同期の女性が自分の上司というケースも多いらしい。特に日本以上に「学歴社会」であるため、人数がごく限られており、幹部候補である「大卒」には致命的な「差」となることもある。そのせいか、こちらに来て「女性の部長」と「男性の次長」という組み合わせによく出くわす。

軍隊の「正式な」定義・位置づけはシンガポールの法律でも見れば「正確に」わかるのだろうが、こちらでインターネットをやっていても「それらしき」ものを見る事ができる。SBA(Singapore Broadcasting Authority=シンガポール放送管理局)のホームページがそれである。

このページ、シンガポール在住の殿方にはおなじみかもしれない。そう、「プレーボーイ」「ペントハウス」といった世界的に有名な「その手」のホームページにアクセスしようとすると、警告文とともに「規制内容について、詳しくはSBAのホームページへ」と出てくる。その中に、シンガポールが規制したいと考えている内容が明記されている。

「治安と国防」「公衆道徳」「人種・宗教の調和」の3種類に大別され、セックスの大量描写やいわゆるポルノは「公衆道徳」違反。これはわかりやすいし、未成年の性問題もあり、どこの国でも何らかの「ポルノ」規制はある。法の執行への信頼を損なう内容や政府への不満・憎悪を扇動する内容を含めた規制が「治安と国防」。

最後の「調和」はアジア版USA的「多民族国家」ならではの内容で、人種的・宗教的グループへの攻撃や人種・宗教対立の扇動に対する規制である。これらに反する内容のホームページが、シンガポールにおける規制対象であり、同時に当局の「関心事」でもある。つまり、「人種・宗教の調和のもと、政府を信頼して忠誠をつくす国民」がシンガポール人の理想像であり、この教育が「軍隊」でなされているみたいである。

シンガポールの「個人」休暇には「ナショナル・サービス」と呼ばれる「軍隊休暇」がある。「兵役」の時のコースの選び方によって、社会復帰した後も1〜2年に一度1ヶ月程度の「軍事演習」がある。先日参加した社員に話を聞くと「トレーニングは実質一週間で残りの三週間は同窓会みたいなもの」とのこと。

多民族国家の団結のために軍事訓練では「マレーシア語」を使い、寝食を共にして語り明かすそうだが、その軍事的レベルは「一応ある」という程度らしい。人口も領土も非常に限られているから仕方ないが、自分の国を守るという「意思表示」にはなっている。彼曰く、「シンガポールに投資している国々に対するPRにはなるはず」。

考えてみれば「軍事力」などそれで十分である。「核」戦争など起きれば「地球滅亡」は目に見えているし、それ以外の紛争にしても一定の「力」さえあれば、むしろ「国際世論」を味方に付けるかどうかが問題である。「世界の警察」なんて言われて「圧倒的な軍事力」を有するアメリカでも、内外の世論に背く行動はできない。緊張関係になった時「見せる」武器が大事であり、「クエート」みたいに最初から何もなくても「世論」に守られて復活するケースもある。むしろ「多民族の団結」の方が「軍隊」の大切な「位置づけ」かもしれない。

セントーサというシンガポール南部のリゾート島にあるゴルフ場で、「写真撮影禁止」の札が立っているホールがある。対岸に戦艦が係留されている為であるが、ゴルフのプレー中に写真を撮っている人は少ないだろうし、むしろ観光客に「意識づける」事が目的、と見るのは考え過ぎだろうか。

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5月11日

<アマさん>

アマって、疲れた時にホテルの部屋とかに呼んで、肩とか腰とか揉んでくれる人だろー...それは「あんまさん」でしょ。

プロじゃないことかなー??...それは「アマチュア」!

どうも「アマさん」という言葉に日本人は馴染みがない。「メイド」とか「家政婦」「お手伝いさん」と言った方が分かりやすいかもしれない。もちろん日本でも「ホームヘルパー」と称して、老人や病人介護の為にボランティアとか行政派遣で働く人は増えてきた。しかし明治とか大正時代ならともかく、「アマさん」が住み込みで家族の身の回りの世話をしてくれてる家庭は、日本ではそれこそ数える程しかいないだろう。

東京なんかの都市部では、「アマさん」に与える部屋があるくらいなら自分の部屋にでもしたいぐらいだ、と感じる方が普通。経済的にもスペース的にも現実的でない日本に比べ、シンガポールではいるのが「常識」。しかも、国民の大半がHDBという政府供給で平均120平米ほどの「団地」に住み、トヨタ・カローラの中古でも400万円する「高い車」を持ち、その両方のローン支払いに追われながら、である。

アマさんには「住み込み」と「通い」がいて、前者はだいたいフィリピンからの出稼ぎ。10代後半から20代前半の女性が中心で、朝は洗車にはじまり、掃除・洗濯・買物・子守りから食事の世話、奥様やお子様の学校へのお供までする。後者は中国人のおばちゃんが中心。「家にいても暇だから」とか、「子供が好きだから」と働いている人も多く、中には「ご主人様」よりよっぽど「お金持ち」ということもよくあるそうな。

なぜこれほど「アマさん」が一般的かというと、ここにもシンガポール政府の全面的なバックアップがある。「お手当て」が一ヶ月だいたいS$400(住み込みのフィリピン人の場合=3.5万円前後)で、その中から自分の服や、場合によっては食費まで出すわけだから、フィリピン往復の旅費まで自分で捻出していたら自分の家族に送金する分など無くなってしまう。

そこで政府は「フィリピン・メイド」に限り、その雇い主に「特別納付」を義務づけた。金額は一ヶ月S$350前後。これをプールしておいて、そのメイドの帰国費用にしてやるのである。その代わり「フィリピン・メイド」が「掛け持ち」して高収入を得ようとか、あるいは主人の持ち物盗んだりしたらすぐに本国へ強制送還。これなら雇い主もアマさん自身も安心していられる。

これを日本に当てはめると、都市部を含めて不可能な制度ではない。地方自治体が建てた広めの団地にでも住んで、月8万円前後と「一部屋」の負担で、家族全員の身の回りの世話をしてくれる人がいるのなら、そう悪い話ではない。いつまでも夫婦共稼ぎができることを考えれば経済的にも多分問題ないし、何より「妻」がいつまでも「主婦・母親」に拘束されなくて済む。女性に「おいしい」社会環境である。

ところがこの制度にも「おち」がある。一番深刻なのは「しつけ」。少し考えただけで想像に難しくない。自分の親に「頭が上がらない」人のいう事を素直に聞き入れる子供がいるだろうか。小さい時から「甘やか」され「ご機嫌」をとられ、親からは小遣いを「たくさん」もらって育った「がき」が、まともなはずがない。シンガポールで「少年非行」と「けんか・暴力」が社会問題になりつつある。

この事をある飲み会でシンガポール人に直接聞いてみた。男3人女2人で25〜45歳の彼らの認識は、やはりこのままでは「まずい」。でも「アマさん」無しでは「生きていけない」。ある女性は、結婚して家に居てもする事がないなら「働きたい」し、それが「子育て」で中断されるのは「いや」、との意見(どこかの国でもよく聞く話?)。

しかもその女性、子供ができた時点で年収が少ない方が「家庭に入る」というのはどう?と僕に聞いてきた。個人的には「母乳」の問題もあるから女性の方が子育てに適していると思うけど、妻の方に「外で働く才能」があるのなら「男が家庭に入る」のも悪くないんじゃない?との答えになぜか「満足げ」。そういえば彼女、もうすぐ子供が欲しいとか言ってたっけ。共稼ぎの「主人」が「主夫」になる日も近いかも。

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<たばこ>

たばこを吸う人はシンガポールで肩身が狭い。エアコンが効いている室内や公共交通機関はもとより、バス停や2人以上並んでいるタクシー乗り場近辺まで「法律」で禁止されている。社内で吸えない「ヘビースモーカー族」がオフィスビルのすぐ外に用意されている灰皿にたむろして、汗を掻きながらたばこを咥えている姿は、可笑しいを通り越して「哀愁」さえ感じる。

でもこれが意外なメリットをもたらす事もある。シンガポール赴任を契機とした「禁煙」を筆頭に、その喫煙所が「社交場」と化しオフィスが隣接する企業の人同士が仲良くなったりする。「いつも貴社の支店長とはお話させていただいています」などと先方から切り出され、こちらが訪問する前から好意を抱いてもらっていてセールスしやすかった、なんてこともあるそうな。

「喫煙者いじめ」にはもうひとつおまけがついて、たばこの値段が高い。一箱500円前後。これはビールなどのお酒にも共通する。「嗜好品は高くても買いたいやつは買う」との中国人的合理主義がこの背景にありそうな気がする。「チャイニーズ」が「拝金主義」なのは有名だが、常に「お金」を話題にするだけにその「金銭感覚」には、しばし舌を巻く。

香港では給料が一円でも高く提示されれば「すぐ」転職してしまうと言われているが、シンガポールでもその傾向は強い。だから会社が無料で行かせてくれるセミナーは「喜んで」参加する。知識取得もさることながら、自分の「履歴書」に記入できるからである。会社生活で言えば、地位の低い人ほど早く帰る。ポストによって収入が違うなら、「多く」もらっている人が「長く・たくさん」仕事するのは当たり前、との感覚である。

有給休暇の取得もすばらしい。シンガポール人は誰一人「取得漏れ」がない。それのみならず「メディカル休暇」と称して医者の診断書を提出すれば、自分に当初与えられた休暇日数以上に休める。しかもその診断書、どの医者でもすぐくれる。くれないと「患者」が寄り付かなくなるからである。

シンガポール的と思うのが、エアコン相場。例えばバスでもエアコン車と「自然風」車では運賃が違うのをはじめ、ホッカーセンター(屋台の飯屋)も冷房の有無で料金体系が違う。不動産や車の「相場情報」も呆れるくらい皆よく知っている。主な媒体が「口コミ」と「新聞」みたいだが、日本にあるような「中古車相場情報」的な本は見当たらない。必要ないからである。

日本にあってもいいな、と思うのはゴルフ場にいるキャディーの能力別料金。「ハンディーキャップ・シングル」のキャディーと「それ以外」が、着ている服の色で区別されている。自分よりうまいキャディーにコース戦略からクラブ選び、ボール探しまでやってもらうのも悪くはない。

彼らの常識では、物事は「金」が絡まってこそ「価値」あり、「たばこ」みたいに「煙」と化してしまうことには「話のネタ」的価値すら感じないのかも、と考える今日このごろである。

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5月4日

<謎のコップ>

こちらに赴任してきてからずーっと解けない謎があった。それは男だけが知りうる世界、でも一部の女性(おばちゃん)も気づいていたかもしれない。それは...洗面所の片隅に置かれたプラスチックの器であった。

コップと表現した方がイメージし易いかもしれない。スポーツ飲料とかを入れるペットボトルみたいな容器を上の方で切り落したもの。口をゆすぐにはちょっと大きいし、第一切り口がぎざぎざしている。オレンジ色をベースに黒インクで何やらアルファベットみたいな文字が印刷されている。

いつも男子トイレの手洗いの左角に、鏡を背に逆さまにぽつりと置いてある。そのうち掃除のおばちゃんが片づけると思っていたが、そのまま放置されている。ところが先日、偶然にもその謎のコップの正体がついに解き明かされたのである。

それは僕が昼食を終え、いつものように歯を研いていた時である。トイレの扉がパタッと開き、一人の小柄だががっちりした少し浅黒い男が入ってきた。何のことはない、当社の運転手さんである。彼のプライバシーの為にも実名は差し控えさせてもらおう。敬謙なイスラム教徒で、マレーシア人とだけ言っておこう。

「やあ、Kumazawaさん、歯磨きとはいい習慣だね。」などと声をかけながら、彼がそのコップを手にしたのである。思わず視線が釘付けになりそうになったが、ぐぅーとこらえて何気に彼の行動をちらちら見ていた。すると彼はその器に水を満たし、コップがあった場所と対角線上に置いてある観葉植物のところまで持っていった。

なーんだ、水をやるための器だったのかー、と声を出しそうになったが、ちょうど磨き終えた時だったので、蛇口のボタンを押して口をゆすぐことにした。そうか、水をやるのも彼の仕事だったんだ、などと勝手に思っていたら、もう一度水を入れだした。あれ、鉢って二個所もあったっけーと考えている間に、彼の姿はすーっと奥の個室へ消えていった。

トイレが故障しているわけでもないのになぜ...!!! そうか!ついに解けた謎。それは彼のお尻拭きに使う水入れだったのである。右手は清く、左は不浄の手だったっけ。一日5回のお祈りも欠かさない彼のことだ、間違えない。僕がここに来てまもなく「断食」が始まり、旧正月の慶びと共に空腹にもお別れしたと言っていた彼。どの地でも自分の信仰を守り抜く。さすがである。

でもちょっと待てよ、さっきあのコップで水をもらった「観葉植物」君の立場はどうなるんだ???

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<地震・カミナリ・夏・おやじ>

今更「恐いもの」を並べるつもりはない。社会人となり子を持つ親の立場にもなって、ようやく世間というものがわかりかけてきたけど、それを語るにはまだ若輩である。して、この4語は何ぞやと言われると、これが「シンガポールの秘密」とだけ答えておこう。

空港からシンガポールの中心部へ向かう高速沿いに立ち並ぶ住宅。そのほとんどすべてがHDBと呼ばれる政府供給のアパート。壁の色が違うだけで、ほぼ同じ構造・サイズ・高さである。ちょうど日本の住宅都市整備公団が、昔大量に建てた団地群を高層化したものとでも言おうか。シンガポール国中の住宅地域が、高島平や多摩のニュータウンみたいに開発されており、国民すべてが平等に家を持てるように考慮されている。

その建物の特徴は、幅2m厚さ20cmほどのコンクリートの板を「柱」のように使って組み立てられていること。通常1Fとなるべきところが虫よけか照り返し防止の為に「柱」だけむき出しの状態。だからよくわかる。しかもその上はだいたい15層で横へ20近い間切りとなっている。つまり、300世帯ほどが入居できるアパートである。これが幾つも幾つも、それこそ国中に建設されている。

これは地震がない国のなせる技。震度2でも壊滅状態になることが十分考えうるこのHDBに、ほとんどのシンガポール人が住んでいる。そう「地震」である。

この国の落雷は本当に恐ろしい。ゴルフのプレー中にかみなりで亡くなった話など日常茶飯事。街では高い街路樹が歩行者を雷から守ってくれている気がするが、でも車から守ってくれるガードレールは見たことがない。信号もすごくシンプルなものがぽつりと設置されているだけ。道の舗装は完璧だけど、全体的に日本と比べると恐ろしく金をかけていない。自然災害も含めて、「ON YOUR RISK」の発想が徹底している感じ。そう「カミナリ」である。

この国は年中30度前後である。「朝の冷え込み」が20度を切った話を聞いたことがない。寒さに対処しなくていいのはすごく楽である。まず夏服しかいらない。エアコンはクーラー機能だけで済む。室内は密閉されている必要はない。お風呂もシャワーで十分だし、お湯は少し沸けば事足りる。木も年中枯れることがない。そう「夏」である。

この国で働くにあたり2種類のビザが用意されている。就労ビザ(EMPLOYMENT PASS)と労働許可(WORK PERMIT) 。前者は経営者又は管理者層、高度な専門技能を有するものが対象で、大抵の日本人派遣社員がこれを取得する。後者は単純労働者用。アマさん(お手伝いさん)や工事現場などの作業員、清掃員がこれに該当する。

つまり、シンガポールに資本投下したり、技術移転したり、国民を教育してくれる人と、シンガポール人がやりたくない仕事を低賃金で請け負ってくれる人のみを受け入れている。その大半がおやじ。そう「おやじ」である。

これら4つ「地震・カミナリ・夏・おやじ」がこの国の発展に大きく関わっていることは明らかである。地震被害に悩まされ、「道路」に金をつぎ込み、寒い冬があり、外国人労働者受け入れに消極的などこかの国とは大きく違う。でも、しかしである。これらはいづれも「無い国」の逆転の発想ではないだろうか。地震がない、社会資本がない、季節がない、労働人口がない。これらを逆手に取っただけである。

そう考えると、今自信を失っている「どこかの国」に欠けているのは「開き直り」かもしれない。元気がなかった僕の母国が、将来元気な姿に蘇って出迎えてくれる為の、そのヒントがここにある気がする。

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4月27日

<日本人と韓国人>

「近くて遠い隣国」これが率直な日本人の認識を表した「韓国」評だと思う。もちろん貿易相手国としてや、草の根的交流をしている人たちにはあてはまらないかもしれないけど、一般的な親近感という意味ではアメリカや、同じアジアなら香港とかの方が身近に感じる人が多いはず。

僕も公私ともに「関心」がなかった。仕事上で関係する「WON(ウォン=韓国の通貨単位)」は実需の伴わない通貨取引きを禁じているので、ほとんど取り扱ったことがない。プライベート面でも大韓航空のトランジット(乗り継ぎ)で3時間ぐらい降り立ったことがあるぐらい。近いといわれてもキムチと焼肉を食べるためにわざわざ出向く気にもならない(失礼!)。

でも「ところ変われば」である。シンガポールにきて急に韓国人との交流が増えた。しかも会う人会う人みな日本人に似ているのである。何がって「発想」が。しかも「年代別発想」まで似ている。ついでにみんな「英会話が苦手」で「ゴルフ好き」。この暑い国でも、相手に対し失礼がないように「背広の上着」着用してるのは、日本人と韓国人だけ。

発想その一「わかってくれるはず」。
いわゆる以心伝心。相手と英語で会話しているのに「はっきり」言わない。

発想その二「酒の席での会話」
日本人の「無礼講」に近い発想。典型が「女性」に関する会話。例えば、シンガポール人の女性が同席している宴会での話。「お国自慢」の話題で「韓国人女性は綺麗な人が多いですね」との問いに韓国人の某氏曰く、「韓国の女性は顔が綺麗だけど、シンガポール人は下半身(おしりと足)がいいですね」。本人はお互い打ち解けて「本音の会話」ができることを求めていた節があったけど、初対面に近い人同士では...

発想その三「記念品」
いわゆる外資系の企業のパーティーに招待されても、帰り際にお土産を渡されることは少ないし、あってもその会社の「社史」などの「本」が多い。それに比べ日系企業は感謝の意を込めて「気の利いた」ものを用意する。韓国も同じ。ある韓国系銀行のシンガポール支店開設披露パーティーの記念品は「水筒」。この国の必需品だから喜ばれるはず、との心が読める。

この前タクシーに乗ったら「韓国人」に間違えられた。今までの人生で初めての経験。興味本位で理由を聞いたら、「中国人と台湾人やシンガポール人が似ているように、日本人と韓国人は似ているから、そのどっちかなーと思っただけ。」との答え。前者は同じ「チャイニーズ」なんだから当たり前だろー、と言いそうになったけど、客観的に見るとそれくらい雰囲気が似ているのかも知れない。

エピソードは数あれど、交友を深めれば深めるほど親近感が湧いてくることに変わりはない。「韓国籍作家のサイン会中止」など所詮日本の身内話という気がしてくる。結婚相手にしても住んでいるところや職場の席が「近い」ところで見つかるケースが圧倒的と言われている。やっぱり地理的に近いことはそれなりに意味があるはず。

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<さすがは世界No.1>

シンガポールは1番で日本は18番。これは去年の政府番付の話。シンガポールは5年連続の首位キープだそーな。日本が「落ち目」の傾向は十分納得できるけど...

ここに住んだ最初の印象は「日本のバブル直後の雰囲気に似ている」であった。すべてが順調に行って何の不安もない、という自信が国民の間にみなぎっている。確かに納得させられる面も多いし、日本も参考にすべき事も多い。

何よりも特筆すべきは「都市計画」。この日本の淡路島ほどの大きさしかない国にグリーンスペース(緑地帯)があふれている。しかも家は広いし駐車場はどこでも十分の数が用意されている。「このスペースに理想的な都市像を描け」と言われれば、この国自身が模範解答となろう。

まず、電信柱がない。これが景観をよくしている。落雷の被害が日本の比にならないことが理由なのかもしれないし、高電圧(220V)を家庭用に配給していることも関係しているかもしれない。ちなみにこの電圧だとポットのお湯もすぐ沸くし、冷房の効きも全然違う。日本でも論議があるそうだが、あれだけ100Vが普及していたら、ちと無理な気がする。

排水設備が完璧。スコールで局地的な大雨なんて日常茶飯事の国で、側溝から水があふれているのを見たことがない。街角でゴミも見かけない。あとは施設の配置。空港横でスペースはあるけど人が住むには騒音が厳しいところにはゴルフ場。海岸沿いで都心から近く、砂浜がないところはホテルや高速道路や荷物積み下ろしのコンビナート。砂浜があればシーフードセンターはじめリゾート施設が並ぶ。

駐車場が多いのは、路上駐車している車をほとんど見掛けない事でもわかる。料金が1時間あたり50円もしない上に、主要施設の地下にはどこでもあるのだから、そんなリスクを取る必要がない。公共料金の安さもすばらしい。バス・地下鉄が50〜100円で用足りるのに加え、タクシーも安い。住んでみても、ガス・水道・電気は日本の1/3以下で済むし、電話料金に至っては「ただ」に近い。

理想の社会を実現化したと言っても過言ではないが、もちろん疑問点は多々ある。ほぼ独占に近い一党支配の強力な政府。その主導による政策がなせる技という点では共産圏と相通じるものがある。思想統制ともとれるビデオや本の「検閲」は有名な話。井口氏の「告白」は発売されてもニックリーソンの「ベアリング証券..」は日本語訳も含めて発売禁止。舞台がシンガポールだから。シンガポールで政治と麻薬・暴力・スキャンダルはタブーである。

「汚い」世界から隔離され、女性も子供も安心して暮らせる街。外資の「受け皿」として英語を話せる「良質」な労働者たち。この国が将来もこの雰囲気を維持していきたいと思うなら、「無菌室」で育った「がり勉型」学生たちの「当事者意識」「主体性」をどう育てるか、この問題を避けては通れまい。

とは言え、ちょっとの間だけ住まわせて頂く分には、何も文句はございません。毎日ありがたい「お日様」の輝きの下、元気に遊びまわる子供の姿がまぶしい??

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4月20日

<セミの鳴き声>

暑い所にいるのに何か変だと思ったのは、シンガポールに来て一週間ぐらいしてから。街が静かなのである。そう、日本の夏に付物の「ミンミン」サウンドや「ツクツク」テンポがここにはないのである。これが意外に寂しい。

オーチャード近辺の繁華街を歩いていて、周りの人の声がやたらと耳につくのでふと考えると、呼び込みの声やパチンコ屋のジャラジャラ音がない。まあこれは無くても構わない。日本基準で考えると、騒音・喧騒は都会の象徴であり、静けさや静寂は田舎の証との認識が強い。都会の面があるのに静かなのは評価できるかもしれない。でも、都会・田舎関係なく「セミ」は存在している。それがうるさい中にも、どことなく懐かしく感じさせる所以ではなかろうか。

しかし、シンガポールと日本の自然は「セミ」レベルの違いだけではない、と改めて認識したのは、「ゴルフ」であった。もちろん、常夏の国のマナーとして半ズボンは常識であり、昼の強い日差しを避けて午前中にラウンドを終わってしまうスケジュールも大きく違う。それらはともかくとしてである、まず驚いたのは蟻。

人一倍ボールを叩いて「コストパフォーマンスがいいゴルフ」を信条としている僕の常で、コースの端っこの方を一人歩いていると、「危ないからこっちにボールを出しなよ」の声。何が危ないかとよく見ると、日本の3倍はあろうかという大きな「アリ」。そうこうしているうちに短パンでむき出しのすねを噛まれて、これが痛い。

ようやくフェアウエーからのアプローチとPWを握って振り下ろすと、ヘッドアップしてトップ。しかもスライスして右の池の縁へ。あーあとボールの行方を見ると、なんか得体の知れないワニぐらいのいきものが生えずりまわっている。ぎょー!でかいトカゲだ!俺のボールの傍で舌をベロベロ出すな!

幸いコースキーパーのおばちゃんが、トラクターで池の中までトカゲを追い出してくれたからプレー続行。よし、気を取り直してティーグラウンドからのショットはフェアウエーど真ん中!と思いきや、「飛びすぎだね」の声。行ってみると、ティーとグリーンを結ぶ直線上にはブッシュがあるではないか。

くそーロストにしてたまるか!と入ろうとすると「アイアンを2本ぐらい持って入ったら」とのアドバイス。「なぜ2本」の疑問は日本ではあまり見たことのない標識で納得。とぐろを巻いたデザインは「ヘビ注意」。しかも有名な「コブラ」のお姿にすぐロストを宣言。

ところが「敵」は動物だけではなかった。あまりの暑さに日陰を求めて移動していると、「もう少し陰の端にいた方がいいよ」と上を示した指の延長線上には「ココナツの実」。「当ると痛いからね」痛いだけで済むか!

学習効果で「アリ」確認。よし、この木と木の間を抜けばラフから一気にグリーン上、多少葉っぱに当ってもパワーショットで大丈夫、と構えて打ったら「ボスッ」と鈍い音とともにボールが目の前に落ちてきた。「バナナの葉はボールぐらい叩き落としちゃうよ」..打つ前に言えよ!

暑さと共に身に染みたシンガポールの自然。この過酷な自然の中で日本の「セミ」君が生き延びていけるのか、まずそのことを考えるべきなのかもしれない。

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<便利な日本語>

ちょっとした仕事上の話。シンガポール人に「この書類を日付順に並べてくれる?」と頼んだ時の事。OKと言って整理を始めたと思ったら、しばらくして怪訝な顔で「H8.12.31っていつの事?」ときた。ああ日本語の書類を混ぜちゃったのか、と気づき「Hは平成でH8は1996年と同じ意味なんだよ」と教えながら元号と西暦の読み替え表を作って渡したら、「何で年の表示に二種類あるの?」とか「混乱しないの?」等々質問が続く。

答えながら、ふと思った。元号に固守してコンピューターを使っている企業には「2000年問題」は関係ないかも。ご存知のように「2000年」は下二桁が「00」になり、コンピューターによっては1900年と誤認してしまう問題。意外と時間と金がかかるので、その対策に頭を抱えている会社も多いはず。昭和から平成に移る時、西暦に替えなければよかったと思っている経営者もいたりして。

もうひとつ思ったのは、日本語には表記方法が多いこと。今更説明するまでもないが、ひらがな、かたかな、漢字にローマ字。特にこのローマ字が優れものと気づいた。シンガポール人は通常、英語と中国語を両方操るので、漢字とアルファベットを両方使うと言う意味では日本人に近い言語感覚があるかもしれない。でも、中国語は「漢字」、英語は「アルファベット」でしか意志疎通ができないのが決定的に違う。

近頃のシンガポリアン(シンガポール人のこと)は、英語教育の浸透でアルファベットの方になじみが有り、漢字は得意としない。しかも中国語にはマンダリンやホッケン等々いろいろ方言があり、しゃべれると言えども共有語にはなりづらい面がある。だから彼らが英語で会話している方が多いので気づくのに遅れたが、同じ発音でも語尾の抑揚で区別する「中国語」を「アルファベット表記する」ことは有り得ないのである。

仕事上よく使うロイター(=テレックスの双方向リアルタイム版)で僕がアルファベットで東京と通信していたら、「日本語は便利でいいね」と言われてしまった。英語力があれば英語で会話した方が早いんだけど...と言おうとしてやめておいた。馬鹿な内容がばれてしまう。日本語様々である。

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4月13日

<甘いアイスティー>

大阪に万国博覧会が来た時両親に連れられて見に行き、岡本太郎の「太陽の塔」を模ったプラスチックの貯金箱の中にキャンディーが詰まったものを、親にねだって買ってもらった記憶がある。そのころのジュースと言うと「ファンタ」であった。「ファンタオレンジ」は本物のオレンジよりもオレンジ色がきつく、「ファンタグレープ」の色もぶどうの巨砲より濃い紫色であり、舌べろに色が残ったものだ。

今の日本でジュースと言えばまず100%天然ものか炭酸などが入ったものかの選択があり、天然もの以外でも奇抜な色をつけたものや、極端に甘いものは好まれない。同じようにコーヒーや紅茶でもホット・アイスを問わず「砂糖やミルクは各人の好み」と言うのはいつからか当然の常識となっている。

ところが、である。シンガポールのKFC(ケンタッキー・フライド・チキンのこと)で「アイスティー」を注文したら「レモンかミルクか」は聞かれたが日本では渡される「ガムシロップ」が付いてこない。もともとシロップをもらっても「いらないよ」とその場で返すだけなので、まあいいやと席に向かい飲みはじめてびっくり。甘いのである。しかもすごく甘い。喉がすごく乾いていたのでLサイズ(1リットルは入る)を頼んだことが今更のように悔やまれる。店員に「シロップ抜きに替えてくれ」と抗議したが怪訝な顔で「シロップ抜きのアイスティーなんかない」と言われてしまった。

他の店でも「シロップ抜きのアイスティー」を聞いてみたが見つからない。よくよく考えると缶のお茶も街角では販売していない。日系のスーパーで缶やペットボトルの「烏龍茶」があるがすべて日本からの輸入でありすごく高い(一缶200円ぐらいの感覚)。そう言えば日本で缶「烏龍茶」が発売された時、「なぜお茶にジュースと同じお金を払って買わなければいけないんだ」と疑問に思ったのを思い出した。ちょうどコンビニで「おにぎり」を売り出し、デパートで高級「おせち料理」を取り扱いだしたころと時期が同じだった気がする。

そうか、「甘く」もないお茶に「お金」を払わなくても、「天然」でいくらでもおいしいジュースがそこら中で売られているからか。「甘くない」お茶なら熱いチャイニーズティーで十分であり、中華料理と飲むなら冷たいお茶よりもなじみがいい。どうしても冷たくて甘くないものがいいなら、ミネラルウオーターがあるではないか。

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<チキンライス>

チキンライスと聞くと日本人の感覚では「ああ、子供のころよく食べたケチャップごはんのことでしょ」となるはず。それを玉子焼で包むとオムライスで、ライスが入らなければオムレツ(当たり前か)。個人的には映画「たんぽぽ」の一場面で調理場に忍び込んだ浮浪者(?)が、軽やかな手さばきで鮮やかな色のオムレツを作ったのが印象に残っている。その後何回か真似して作ったっけ...

ついつい話がそれてしまったけど、ここシンガポールで「チキンライス」といえば必ず蒸したチキンの切った物にご飯が付いてくる。チキンには骨がついている時もあるけど、基本的には取り除いて有り、とても柔らかくうす味で煮込んである。ご飯は通常そのチキンの出し汁で炊いており、にんにくが多少入っていてそれだけでもおいしい。ちなみに鳥肉入りチャーハンは「フライドチキンライス」である。

そもそもの発祥地はオーチャード通りの高島屋並びにあるマンダリンホテル一階のレストラン(店の名前を忘れちゃったけど、いつも10人ぐらいの行列が出来ているのですぐわかるはず)で、今もその店の看板メニュー。旅行者と見ると座った早々にオーダーを取りに来て「チキンライスでいいのか」と聞いてくる。18ドル(1,500円)ぐらいするけど一度は口にして見る価値大。三種類のソースがあり、それにチキンをつけて食べれるのがミソ。ぱさぱさしたタイ米を使った出し汁ごはんはレンゲをサポートに箸で食べるのがシンガポール流。ごはんのお代わりも自由とのこと。

まずトラベラーの基本であり、いまだに一番うまいと言われているここのチキンライスが気に入ったら、他の店でも食べ比べてもらいたい。シンガポールの面白いところは、同じような内容でも店によって値段が格段にちがうし、味も本家に劣らない場合が多い。特にホッカーセンター(屋台)には掘り出し物的店がよくあり、チキンライスにしても一番安いので2ドル!からあり、皿の上に出し汁ご飯を広げチキンを刻んで乗せたもの。チキンが広がらないように(?)ごはんとの間に胡瓜がひいてあり、やわらかチキンにぱさぱさライスとパリパリきゅうりのコンビネーションがいい。

本家に一番似ているのはシンガポール南のリゾートアイランド、セントーサにあるゴルフ場で出しているもの。器も三種類のたれもほぼ同じであり値段まで似ているが、味はやはり本家に軍配が上がる。チャイナタウンやMRTノベナ駅の近くにもうまい店があるそうだが...それだけ身近なメニューなわけです。

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4月6日

<Yuniさんのシンガポール・スリング>

シンガポール最初の宿泊は「HARBOUR VIEW DAI-ICHI HOTEL」。長期滞在に適した料金体系で、たいていの日本人派遣社員が泊まるみたいなんだけど、僕のチェックインした12月27日はさすがに会社員の姿は少なかった。ほとんどが観光客だし、クリスマスも過ぎていたせいか、日本人や韓国人などのおじちゃん・おばちゃんの団体ばかり。

いくら仕事で来たとはいえ、外は30度を超える暑さなのに独りだけネクタイして上着まで着ている姿は、さながら夏の動物園で暑さに耐えている白熊。脱ぎたくても脱げない「毛皮」に「好奇の視線」。そそくさと部屋に戻り着替えを済ませて、ようやく人間の仲間入り。さて、どこかに繰り出すかと、初めてくぐったのがホテル地下のバー。

店の名前は忘れたけど、宿泊客相手らしく、大きく開かれた入口から縦長にテーブル10ぐらい配置され、カウンターに椅子が10ほど、奥にはちょっとしたステージまである。そもそもここを選んだのは、WELCOME DRINKサービスがあったから。券を差し出してTIGERビールの冷えたのを「きゅっ」とやって生きている実感を味わっていたら、ふと一人だけ違った制服で立っている女の子が視界に入ってきた。カウンターの外には3人の女性がいて、他の二人は中国系らしい顔つきでチャイナドレスが似合い、カウンター越にバーテンダーとなにやら楽しげに会話している。でもその子だけロビー受付けの制服を着て、入口付近でぽつりと立っている。薄暗い照明でも肌が浅黒く見てとれるし、他のスタッフとまだ馴染んでいない感じ。

ついつい視線が向いていたら目が合ってしまった。内心ぎょっとしていたら満面の笑みで近づいてきた。かわいいというより親しみの持てる顔といおうか、愛くるしい目を真っ直ぐ向けて「ビールのおかわりはどうですか」と聞いてきた。ほとんど飲み干していたのでお願いするとすぐに持ってきてくれたので、「一人だけ制服が違うね?」と声をかけたら今日からここに配属されたという。タイの関連ホテルから研修生として派遣され、初めての職場がここ。シンガポールに来たのはつい数日前とのこと。

僕も来たばかりとわかると、うれしそうにいろいろ話してくれた。ついついいい気になって二杯目もすぐに空にしてしまうと、「他の飲み物でもどうですか」ときた。うーん、そう言えばシンガポール・スリングなんてあったね、と聞くと、シンガポールで考案されたと説明してくれる。ラッフルズホテル中にある「ロングバー」のバーテンダーの作品と「地球の歩き方」に書いてあったなーと、うぶろげな記憶が蘇ってきた。「じゃあそれ頼む」と注文。

またまたにっこり微笑んで赤色のロンググラスを運んできてくれた。男一人バーで飲むにはちと似合わない気もしたけど、シンガポールで飲めば本場の味のはず。でも既に下地もあったせいか、以前日本で飲んだのと変わらない。「やっぱりレシピはどこでも同じなの?」と聞くと、「バーによって多少ちがうみたいですよ。でもここではオリジナルの作品と同じ分量で作っているみたいです。」ときた。それならそのレシピを教えてよ、と頼んだら、カウンターの中まで聞きに行ってコースターの裏に書いてきてくれた。

SINGAPORE SLING

30ml:Gin
5ml:Cherry Heering
5ml:D.O.M
5ml:Grenadine Syrup
60ml:Pineapple Juice
5ml:Limu Juice
(コースターに書いてあった綴りのまま)

最後に「名前を聞いていなかったね」と言うと、あのスマイルでレシピの下に「Yuni」と書いてくれた。

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<タクシーの「生活臭」>

シンガポールに来て一番変わったのは交通手段じゃないかな、と思う。
以前横浜に住んでいて、東京・青山のオフィスに通っていた時は当然のごとく電車。鎌倉方面から来る横須賀線(通称スカ線)に乗って、新橋で銀座線に乗り換え...なんて生活。これが週末になると車。横浜は坂道が多いし、一方通行や狭い道、行き止まりまであって幹線道路以外地元民しか走れない。各地の渋滞を尻目に愛車のLEVINちゃんに家族を乗せて走り回っていた。

ところが...今はバスとタクシー。シンガポールにも地下鉄はあるし、今住んでいるところから徒歩5分のところに駅があるんだけど乗らない。なぜって、5分が遠いし、目的地についてからまた歩くのが面倒臭い。贅沢に聞こえるかもしれないけど、この常夏の国で炎天下に外を歩く行為は日本の3倍は疲れる。

そこで登場するのが徒歩3分にあるバス停を通る路線バスと、うちのアパートの道はさんで反対側にあるタクシー乗り場に来るタクシー。

まずバスはエアコンが効くのと天然風のとで値段がちがうし、乗る時に行き先迄の運賃を払うんだけど、これがいいかげん。例えばエアコンカーでも最低料金は60セント(50円くらい)でバス停5つくらい毎に10セントずつ多めに払う(僕もよく知らない)システムなんだけど、バス内の自動販売機で60セントより高い切符を買うのは律義な日本人くらい。まあたまに検札が抜打ちであって、料金が不足しているのが見つかっても、その差額を取られるだけなんで、正直者は...の世界かも。

さて、問題のタクシー。日本でも初乗りが値下げされたとか言っているけど、やっぱりシンガポールは安い。2.40ドル(200円強)から始まって10セント刻みで上がっていくんだけど、通常5ドルでお釣が来る。チャンギ国際空港からシンガポール島のほぼ中心に位置するオーチャード界隈までの乗車でも15ドル前後。という事は、島を横切っても30ドルくらい。そうなりゃ使うしかない。

ところがこの料金体系がきっちりしているようでよくわからない。メーター表示の他に、中心部の車乗り入れ制限地域の通行料や、利用者の多い時間帯の割り増し料金、迎車料金は初乗りと同額。そして日本でもおなじみの深夜割り増し。しかもそれらすべてを暗算で加算する。慣れるまでぼられている気がして文句つけるともっともらしく明細を説明するし、その話をしている間もメーターが動いている!圧巻は深夜料金が始まる0時をまたいで乗った時。じーっと考え込んで案分計算している。そんなのこっちの酔った頭で検算できるわけもなく、結局言われるままに払うことになる。

まあ深夜タクシーがつかまりにくくなるのは万国共通なんだろうけど、この0時を境に急にタクシーの数が増える。料金5割増しになるんだからそれまでどこかで休憩しているそうな。でも「あー、そこで止まって」と言ってから減速して停止するまで横目でメーターを睨むドライバーの姿も万国共通じゃないかな。たとえ10セントでもこだわる「停止間際の加算」には生活のにおいがする。


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3月30日

<カパカパ(capa capa)>

何といっても最初に語りたい経験が、この「カパ(capa)」です。
僕がこの言葉と初めて接したのは、年の瀬押し迫った12月31日に地元不動産業者に賃貸物件を見せてもらっていた時の事。シンガポール支店着任早々まずは家探しということで、「暑い」大晦日、適当に選んでもらったアパートを業者の車に乗せられて順次見せてもらっていた。

もともと英語力に自信があるわけでなく、「えーと、湯沸かし器の容量はいくらなんて、どう聞けばいいんだろう」などとぶつぶつ呟きながら、でも何とか必要な事は聞いている自分に妙に感心していた矢先、「このテニスコートの下はどうなっているんですか?」の答えがこの「カパカパ」。階段を降りて下を覗くと、確かに(?)空っぽのスペース。「そうか、こっちでは<安い、高い>等々片言の日本語を使うことがあるから空っぽの意味で capa capa と言ったんだな」と勝手に解釈していたら、次の物件でも「カパカパ」言っている。しかも今度は「車を買う予定はあるのか」と来た。

ここまで言われて初めて「カパカパ」が「car park(駐車場)」と気づいた。意味が分かってから聞いても、やっぱり「capa」としか聞こえない。後で先輩にそのことを話したら同じ経験をした人も多いそうな。曰く、「シンガポール人、特に中国系の人の発音はやたらと母音を省略するんだよねー。その逆で日本人は母音を強調しすぎるけど..」とのこと。ということは、これが「シングリッシュ=シンガポール人英語」初体験、かな!?


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