アニマシオンとは、アニマ(魂)の活性化という意味の言葉で、スペイン語で「アニモ」というと「元気」「がんばる」という意味で使われます。
日本の文化の中では、お祭りやスポーツなどで心が高まり、「わくわくドキドキする気持ち」ににています。『ゆとり・楽しみ・アニマシオン』(増山均著 労働旬報社1994)
1990年代後半、戦後の日本が高度経済成長のなかで、がむしゃらに働き続けてきた日本人にとって忘れてきた、一見無駄に見える文化活動に着目する動きありました。
教育現場で言えば、家庭内暴力、不登校、いじめなど様々な問題がピークに達し、教育活動を根本から見直そうとする動きでした。それは、社会的にも青少年の犯罪の増加が見られ、心を育てる手立てを国民全体で考え直そうとする時期とも重なっていました。
そんな時に、「読書へのアニマシオン」は、日本に紹介されました。2000年が「子ども読書年」とされ、読書が子どもたちの問題、教育現場での様々な問題を解決するのではないかと、期待されたのです。『読書で遊ぼうアニマシオン』(モンセラット・サルト著 青柳啓子・佐藤美智代訳 柏書房 1997年刊行)が発行され、読書を楽しくすすめるゲームとして紹介されました。私、渡部康夫も、2000年に全国学校図書館協議会から『やってみよう読書のアニマシオン』を刊行しました。2000年、モンセラット・サルト氏が来日して本場スペインの「読書のアニマシオン」が紹介され、『読書へのアニマシオン75の作戦』(モンセラット・サルト著 宇野和美訳 柏書房 2001年)が刊行され、スペインでの読書へのアニマシオンの作戦の全容が明らかになってきました。そして、私を含めてアニマシオンに関心を寄せる人たちがスペインに行き、モンセラット・サルトさんの教えを受けることになります。その後、アニマシオンに関心を持つ多くの教育関係者や読書教育関係者によって、それは単にゲームではなく、フランス、イタリア、スペインなど南欧の文化と深く関わった文化活動であることに気づくことになります。アニマシオンは、上から一方的に教え込むのではなく、本来子ども自身が持っている力を引き出す教育法であること、モンセラット・サルト氏の「読書へのアニマシオン」は、モンセラット・サルト氏がそのようなアニマシオンの手法を「読書活動のプログラム」として確立したものであることがわかってきました。
さらに、この間、辻由美氏などフランスの教育現場を訪れた読書教育に関心を持つ人々により、フランスの読書運動を紹介されるとともに、「アニマシオン」には、広い意味があって、幅広い読書活動を指す言葉であることが見えてきました。
フランスでは、学校図書館に、司書とともに、読書の楽しみや有用性を発見させるためにアニメーターを置いているという。(『読書教育』辻由美著 みすず書店 2008年 15ページ )
『読書教育 フランスの活気ある現場から』(辻由美著 みすず書房2008年)
『アニマトゥール フランスの社会教育生涯学習の担い手たち』(ジュヌヴィーヴ・ブジョル ジャン=マリー・ミニヨン著 岩橋恵子監訳 明石書房2008年)
読書だけでなく、教科の学習や道徳や総合的な学習の時間での学習の中でも応用していこうという動きもあります。東京の元小学校教師である岩辺泰吏氏や静岡県で社会科教育に新しい手法を開発されている笠井英彦氏、私渡部康夫などを中心に「アニマシオンクラブ学び探偵団」を作り10年以上にわたって毎月の定例学習会、年に2,3回の研究集会を開いています。
学校だけでなく、黒木秀子さんなど、地域の読書運動を続けて来られた方にも定着してきています。今年2008年、黒木秀子さんを中心に「特定営利活動法人 日本アニマシオン協会」を作り、アニマシオンに使う本の貸し出し、作戦の研究、講演など研修会を実施しています。
2,読書活動の意味とアニマシオン(創造のための読書活動)
新しいお話に出会うとき、ドキドキわくわくするものです。本を読むという行為は登場人物やお話の場面を想像し、数々の出来事を共有することです。
『読書であそうぼうアニマシオン』(柏書房刊 )には、次のように書かれています。
「本を読むうちに想像力によって起ち上がってくる登場人物や場面が、読み手の5感を開き、グループで数々の出来事を共有しながら夢中で読んだ1回の読書体験が、他のあらゆる本に対しても読み手の心をひらかせる、そんな本との出会い」が「読書へのアニマシオン」ですと。
そして、読書へのアニマシオンで大切にしたいことは
「・本を全く、またはほんの少ししか読まなかった子どもが本に夢中になったでしょうか?
・与えられるのを待っているだけでなく、自ら探し求める子どもになるようたすけられましたか?
・子どもの中に生まれた、読書を楽しむ感性を伸ばすことができましたか?
・本にはたくさんのジャンルがあり、多種多様であることを子どもたちは発見できたでしょうか?」
であると書いてあります。
読書がきついと思われるのは、活字という記号を追い続ける精神活動によると言える。だからこそ、知的なトレーニングが必要であり、良い読み手となるための励ましや方向づけが必要です。
「・・・読むためには、「教育」が必要です。子ども自身は、読むための潜在能力を秘めていますが、その力は何もしなければ眠ったままです。それを伸ばすには、引き出さなければなりません。教え込むことで事足りるなら、さまざまな奨励策によって読む能力はとっくに発達し、子どもも大人も自分から本を読むようになっているはずです。けれども、現実にはそうなっていません。大人でも、なかには学校の教師でさえ、真の読み手とは限りません。本の伝える深い意味や新聞記事の内容はおろか、薬に添付された説明書でさえ、理解できない人がいます。こういったすべての事実が、教えるだけでは、不十分なことを物語っています。自主性に基づいて行動することによってのみ得られる、ほかの手だてがいるのです。つまり、子どもたちから本や活字の世界を発見する力を引き出し、子どもたちが読んだものを内面化していく、その子独自の読書のスキーマを作るお手伝いをすること、思考力をきたえ、生きる上で役に立つ判断をするための批判力を身につけさせることが必要なのです。」(M・サルト『読書へのアニマシオン75の作戦』柏書房)
一方、読書は日常生活の一部として自然に行われるものです。無理なく、自然に子どもの持っている力を引き出す手法であり、読書の本質にかなうものであると言えます。
学校図書館は、学びの拠点であり、本を読むこと(読書活動)は、学びそのものであると、考えます。
学校図書館の活性化を阻むものとして、、読書指導と言われる部分で、上から一方的に教え込むという従来の指導法にもあるように思います。その意味で、読書へのアニマシオンは、子どもが本来持っている読書への興味を引き出し、自然に読む力を育てると言う意味で、有効な方法であると思えます。
学校図書館が、読書センターとして機能するためには、読書材をそろえておくだけでなく、読書活動を紹介し、学級担任など実際に指導をする教員に読書活動の具体的な手法について支援し、指導することが必要です。その役割を担うのが、司書教諭や学校司書なのです。公共図書館では、司書であるわけです。
どんな子も、本を好きなるきっかけがあり、そのきっかけを作ってあげて本への魅力を教えるのが図書館司書であり、学校では司書教諭や、学校司書であると思います。図書館司書と子ども達との心の交流を読み取り、図書館の魅力を感じさせることができればと思います。
作戦を行うに当たって
基本的には、事前に本を読んでおくことが前提です。
実際には、読み聞かせで実施することが多いのですが、計画的に実施するためには、年間、実施する時期を決めて、実施する前に図書をそろえて事前に読んでおくように指示するようにしたらよいでしょう。
モンセラット・サルトさんの著書『75の作戦』で紹介されている75の作戦が基本となるのであるが、スペインの文化状況と日本の文化状況との違いを考え、日本の子どもたちにあうような作戦を開発していく必要があります。
@ 『ステラのえほんさがし』(リサ・キャンベル・エルンスト作 藤原 宏之訳 童心社 ISBN : 4-494-00739-0 発行年月 :
2006.6)でアニマシオン
1,いる?いない?
ねらい
●読んだ内容を理解する。
●登場人物を通しての体験を楽しむ。
●記憶力を引き出す。
●登場人物を識別できるようにする。
準備
●作戦に使う人物のリスト(実際に出てきた人物名と、架空の人物名をまぜておく)
●参加者全員が前もって読んでくるのに十分な冊数の本(読み聞かせでも良い)
実践方法
●アニマドールは、人物リストを一人一枚ずつ配る。一人一冊か1グループ1冊あれば、黙読する時間を作る。絵本などの読み聞かせから始める場合は、ストーリーを確認する意味で簡単にあらすじを確認する。
●子どもたちに、リストに出てきた人物に印を付けるように言う。
●子どもたちが印を付け終わったら、アニマドールは、本文中にだれがいて、だれがいなかったかを一人一人に言ってもらう。
●全員が発言したら、アニマドールは、合っているがどうか確かめるために、各人物が物語のどのあたりで登場したかを説明するように言う。
●いた人と、いない人が、はっきりしたら、終わりにする。
2,どんな絵本だった?
ねらい
●この本(物語)の言葉から、場面を想像し、自分なりの物語を作ってみる。
●お話のあらすじに興味を持つ
準備
●ステラのなくした絵本の内容について書かれた文章を抜き出したカード(人数分)
●参加者全員が前もって読んでくるのに十分な冊数の本(読み聞かせでも良い)
実践方法
●『ステラのえほんさがし』の本を読み聞かせる。
●登場人物を確認し、あらすじを確認する。ステラが絵本をなくし、その絵本を手に取った登場人物が絵本について述べていることを確認する。また、なくした絵本の登場人物について確認をする。
●絵本の内容について書かれた文章を抜き出したカードを配る。
●同じカードを持った者同士で、グループを作る。
●グループで話し合って、そのカードからわかるお話を作る。
●お話ができたら、グループごとにできたお話を発表し、お話をつないで絵本の内容を全員で確認する。
●全グループが発表したら、作戦を終わらせる。
『おんちゃんは、車いす司書』(河原正実・原案 梅田俊作・作絵 2006年3月 岩崎書店)でアニマシオン
この作品は、車いすの司書で、福井で図書館司書として本を手渡す仕事をされている河原正実さんの実話をもとに作られたお話です。いたずら好きの3人の男の子が図書館にやってきて車いすの司書であるおんちゃんとふれあう中で、本のおもしろさを知り、本を読んで感動し、涙を流すまでになる過程をえがいています。
1,だれがだれに話したことば
ねらい;
● お話の会話文に注目させる。
● お話は会話文で話がすすめられる。そこで会話文から登場人物の心を想像させる。
● 図書館司書のおんちゃんの人柄、子ども達への接し方について知り、図書館での司書の役割を感じ取らせる。
● 図書館の魅力を感じ取らせる。
準備:
本の中から会話文を書き抜いた会話文をグループで一枚になるように用意する。
おんちゃんの気持ちと、3人の男の子の気持ちとを書き出すワークシート(グループの数分)
実践方法
● 本を読み聞かせる。(事前に手渡して、読んでおくようにすると良い。)
● グループで一冊の本をじっくりと読む時間を取る。
● 全員が本をじっくり読んだことを確認して、本を回収する。
● 会話文を書き出したカードをグループに1枚ずつ配り、「だれがどんな状況で話した言葉か、どんな気持ちを表した言葉か考えよう」と、呼びかける。(ワークシートに書かせる方法もある。)
● それぞれのグループが発表する。
● おんちゃんは、どんな図書館司書かを想像してみる。
『バスラの図書館員 ーイラクで本当にあった話ー』(ジャネット・ウィンター絵と文、長田弘 やく晶文社)でアニマシオン
イラクのバスラでイラク戦争の戦禍から図書館の蔵書を守った図書館員アリア・ムハンマド・バクルさんのことを描いた絵本です。
この絵本の最初に「コーランのなかで、神が、最初にムハンムドに言ったことは、『読みなさい』ということでした」と書かれています。アリスさんは、戦争が始まったときから。黄金の山よりずっと価値のあるあらゆる言語で書かれた本、古い本、新しい本を守ろうと自ら行動をおこします。
2006年私がアメリカの学校図書館の視察にいったとき、小学校の司書さんが子どもたちに読み聞かせをしていて、アメリカの学校図書館の図書館員の心意気を感じたことが記憶に残っています。
前かな後ろかな
ねらい
● お話のあらすじに注目させる。
● お話は会話文で話がすすめられる。そこで会話文から登場人物の心を想像させる。
● 図書館司書のアリア・ムハンド・パルクさんお人柄、図書館や本に対する思いについて知り、図書館での司書の役割を感じ取らせる。
● 図書館の魅力を感じ取らせる。
準備
この本のなかの文章を書き出したカード、人数分
実践方法
● 本を読み聞かせる。(事前に手渡して、読んでおくようにすると良い。)
● グループで一冊の本をじっくりと読む時間を取る。
● 全員が本をじっくり読んだことを確認して、本を回収する。
● このお話の部分を書き出したカードをグループに1枚ずつ配り、「カードを並び替えてどんなお話だったか振り返ってみましょう」と、呼びかける。
● 一番手前に座っている人から自分のカードを読み上げる。左側に座っている人が、自分のカードを読み上げて前の人のカードの前のことが書かれたカードであれば、前の人の前に、後であれば、そのままにする。また左側の人が自分のカードを読み上げて、自分のカードが前の2人の前か後ろか、真ん中か、移動する。後ろであればそのまま座る。順番に全員終わった所で、順番通りにカードを読んでみて、訂正したところがあれば、話し合って順番を変える。
● 実際の本を見て、確認をする。
● アリアさんは、どんな思いで図書館の本を守ったのかを想像し話し合う。
参考図書
同じ河原正実さんの本に次のような物があります。
『車いす司書ハート貸し出します』(かもがわ出版)
『本に囲まれて』(かもがわ出版)
また、同じ主題の本として
『だいすきなほんくん』(クリティン・オコンネル・ジョージぶん、マギースミスえ 山口文生やく 評論社)
『としょかんライオン』( 海外秀作絵本 ミシェル・ヌードセンさく ケビン・ホークスえ 福本 友美子やく 岩崎書店)
ある日、まちの図書館にライオンが入ってきました。人々は大あわて。でもメリウェザー館長は、静かにお行儀よくできるのなら来ていいですよ、と言いました。やがてライオンは、みんなと仲良しに。ところがある日…。
などがあります。