2011年8月、名古屋市立二城小学校の校内研修会で私、渡部康夫が、行った研修会の資料を載せました。
アニマシオンの研修を行う場合、参考にして下されば幸いです。
「生命と動きをあたえ、活気づけるための活動や方法」(フランス語辞典『プティ・ローベル』による第一の定義)
1924年パリに「楽しいひととき館」(公共図書館の名前)が設立されたときから子どもセッション担当司書たちは、その蔵書に生命をあたえるために、来館する子ども達に適した多種多様な文化活動を構想してきた。
お話の時間から朗読のコンクール、さらには作家との出会い、ブックトーク、演劇などの催し物や展示会など、司書たちは想像力と信念をもって、図書館にやってくる子ども達のに読書への興味を喚起してきた。
(『フランスの公共図書館 60のアニマシオン 子どもたちと拓く読書の世界』 ドミニク・アラミシェル著 辻 由美、訳 教育史料出版会 2010年 3月)
この読書のアニマシオンは、フランスにおいて、今日まで脈々と続いている。
スペインのモンセラット・サルトさんの読書教育メソッドとは、
1974年に、ベルギーのドールプで開かれた、ヨーロッパ中心に行われた児童向け出版文学についての研究会が元になっている。
そこで、課題となったのは、「コミュニケーションの手段であるメディアの進歩(テレビやビデオなど)に対して本や雑誌は力がなくなってくるのではないか。」「またメディアの発達によって、子ども達の余暇の利用の仕方が変化し、本や雑誌から離れていくのではないか。」ということである。
そうした現実に対して、子どもが読む力を伸ばそうとする挑戦がはじまり、スペインのモンセラット・サルトさんは、読書教育プログラムを開発していく。1986年から「読書のアニマシオン」の普及活動をはじめることになる。この教育プログラムが日本に紹介されひろまっていく。
(『読書へのアニマシオン 75の作戦』柏書房)
この2つの流れが今日、日本に伝えられた読書のアニマシオンである。
そのほかに読書だけでなくスポーツやボランティア活動など広く文化活動を指し示す「社会文化アニマシオン」が紹介されている。
「学校教育を補完し市民を育成することを目的とする。そうした余暇活動は自らの自由な表現・社会的な諸関係でのより大きな自発性、利害を超越した実践である。アニマシオンは、そうした教育活動・余暇活動の組織化と言うこと以上に、国家政策化されたより広い社会プロジェクトである。」(『アニマトゥール フランスの社会教育・生涯教育の担い手たち』 ジュヌヴィエーヴ・プジョル、 ジャン=マリー・ミニヨン 著 岩橋恵子監訳 明石書店2007年)
新指導要領は、言語活動の重視をうたい、「学校図書館」を使った学習の必要性を強調している。
その意味を考えると、
図書館は、読み物だけでなくすべての知識の宝庫である。学習は学校図書館をベースに展開される。
学校図書館やそこに所蔵されている資料の活用については、工夫が必要であり、ただ本を目の前において、子どもが活用するのを待つだけでは結局、本は使われなくなり、手頃な学習参考書(これも本には違いがないが)やインターネットを使ったり、映像化された資料のみを使うようになるという危惧もある。
そんな、図書館の資料を活用させるアイディアとして、読書のアニマシオンは注目されている。
作戦といわれている様々な活動は、活字によって成り立つ資料を分析する力を育てるのに有効であるし、文字を読む力を育てることが、資料活用能力を高めることになると考えられるのである。
漫画や映像を見ることも、インターネットでわかりやすい解説も、学習参考書も、それぞれ意味があり、学習を進める上で有効であるが、それぞれのメディアの特性を理解し、使い方を考えさせることも重要である。(考え方によっては、それらのメディアは、正しく読み取ることはきわめて難しい。)それとともに文字活字によって成り立つ資料の読み方はもっと大切である。なぜなら、私たちは文字(音声言語、文字言語)によって情報のやりとりをしているからである。
文字(音声言語や文字言語)を読み取る練習を、読書のアニマシオンの作戦によって楽しくできる可能性を持っているといえる。
(1)絵本『ステラの絵本さがし』でアニマシオン
『ステラのえほんさがし』(リサ・キャンベル・エルンスト作 藤原 宏之訳 童心社 ISBN : 4-494-00739-0 発行年月 : 2006.6)でアニマシオン
@ 作戦名
「どんなお話だったかな」
この作戦では、主人公のステラが図書館から借りた絵本をなくしてしまい、絵本さがしをします。そこで絵本がいろいろな人の手にわたっていくなかで、それぞれが感想をいうようになっています。そこで、絵本を手にした人達の一言感想から、どんな物語かを想像する作戦を考えてみました。
A 実践方法
《用意するもの》
絵本『ステラのえほんさがし』(リサ・キャンベル・エルンスト作 藤原宏之訳 童心社 2006年.6月)人数分が望ましいが、なければグループに一冊
登場人物の絵のカード(黒板に貼るためのもの)
登場人物のさがしている絵本に関する感想を書きだしたカード(A6版くらいの小さなカードは、人数にあわせて2、3組作る。黒板に貼る物としてA4程度の大きさのカードを一組。)
「ぼく、あの本の中にでてくる くまが だいすき」
「でも、あの本の中で、みんなが おさんぽするところがよかったね。」
「あの本だったら、ちいさなおんなの子がすてきだったわ。」
「しかし、あの本の けいさつかんが どろぼうを たいほするところは、じつに つうかいでしたな。」
「おかゆが ぐつぐつ にえてるところの おいしそうなことといったらなかったわ。」
「あれは、うっとりするほど いい本ね。こわれたいすを しゅうりするところは、さいこうね。」
「あれは いい本だったね。おんなの子がふかふかベッドを ためしているのがよかったね。」
「おひるねするところが とっても かわいかったわ。」
「でも、あれはいい本ですね。くまが さいごに おうちにかえるところが とってもすてきでした。」
「ふーん。もりの中で くまが おんなの子に であったところが おもしろかったな。」
「おんなの子が もりを はしるところ、わくわくしたけど、・・」
「そうね。・・・みんながよろこんでくれるところね。でも、みんなこの本が、ひとめできにいって、うっかりもっていっちゃうから こまるわね。」
《本の内容》
ステラは図書館から絵本を借りた絵本を今日の5時までにかえすことになっていますが、絵本が見当たりません。弟に聞くと玄関に置いたといいます。郵便配達のハンソンさんは、隣のティファニーの物かと思ってティファニーの家においてきたという、このように絵本はいろいろな人の手に渡って行き、読み継がれていきます。
《実践方法》
事前に各自で本を読んでおいてもらいますが、作戦を実施する前にも読み聞かせをします。(グループごとに絵本の中の文字や絵を見ながら読み聞かせ聞くようにします。)読み聞かせをしたあと、絵本を回収し、登場人物を確認します。そして登場人物のカードを黒板に貼っていきます。
次に、アニマドールはさがしている絵本の内容について書かれた文を抜き書きしたカードを配ります。
同じカードを持っている者同士でグループを作ります。(カードは12枚なので、あらかじめ12のグループに分けておいてグループ毎にカードを取らせても良いでしょう。)
そのカードが誰の感想かを考えさせ、グループの代表の子に誰の言葉か答えさせます。アニマドールは、同じ黒板用のカードを登場人物の絵の下に貼っていきます。
全部のカードを貼り終えたら、絵本をもう一度配って、間違えてないか全員で確認します。
登場人物たちの感想から、ステラが探していた絵本のお話には、誰がでてくるか。また、どんなお話かを考え、発表します。
黒板に貼られたカードから、登場人物は、「くま」「女の子」「どろぼう」「けいさつかん」であることを確認し、それらの登場人物が何をしたのか発表させます。自分の持ってるカードをもとに、誰が何をしたのか、お話の一部をお話してもらいます。全グループが発表したら、作戦を終わらせます。
《注意点》
お話を作るのがメインなので、登場人物の確認は、全員で確認しあう程度で良いでしょう。本についての感想から本の内容を予測させるために誰の言葉なのかを当てさせるので、だれの言葉なのかというより、どんな感想を持ったのかを確認するようにします。
《実践をおえて》
誰の言葉かを考える活動を通してどんなお話なのか考えようとする関心を高めていこうと思ったのですが、お話作りまで結構時間がかかり、興味・関心を持続させるには、3年生以上でお話を読む体験を積んでいる子どもたちでなくては無理であるように思われました。
「お話の中にお話が入っているお話」というのは子どもたちにとって初めての子も多く、お話作りは難しい課題であったかも知れません。簡単に自分の持っているカードからどんなお話か想像して次の子にリレーしていく活動も考えられます。つまり、絵本を読んだ後に「登場人物が感想を述べているカード」を配って、自分の持っているカードからどんなお話かを発表し、次の子は自分の持っているカードから続きのお話を考え発表していくという活動です。
子どもたちは『三びきのくま』ににているという反応もあって、お話を自由に想像していたようです。普段からお話に接している子どもには楽しめる活動だったようです。
低学年では、これは誰の言葉か考えるだけでもいいのかもしれません。誰の言葉か考えるだけでも十分に楽しめます。
ほかにも、楽しい作戦を紹介したいと思います。