登場人物のことが気になる。意見を言いたくなる
なぜ、どうして、登場人物の気持ちや行動を考えることは興味深いもんです。
登場人物の行動には、共感を持つこともあれば、反感を持つこともあります。本を読み進むと登場人物に質問したり、自分の意見を言いたくなるものです。
登場人物の行動は正しいのか、間違っているのか、考えることによって物語を深く読む事になります。
『読書へのアニマシオン 75の作戦』(モンセラット・サルト著宇野和美訳)では、「彼を弁護します。」という作戦が紹介されています。登場人物のカードと読者のカードを参加者の数だけ作っておいて、読み聞かせの後、カードを引いてもらって、登場人物のカードを引いた者が人物になりきって読者のカードを引いた参加者の質問に答えるという活動です。
この活動は、登場人物に本からでてきてもらって、読者としての意見を伝えたり、質問したりすることによって読書の醍醐味を味わうことなります。
問題意識を持って本を読む
作者は、物語の中の登場人物を通してメッセージを伝えるものです。その意味でも、課題を明確にし、読者の考えを確かめる手法として、「彼を弁護します」という作戦は有効な読書活動だと思います。
作戦名
「ライオン(ヌー)を弁護します」
この作戦では、登場人物に質問し、登場人物が有罪か無罪かを考えることによって、作者の考えを読み取ろうとする作戦です。
《対象学年》
小学校中学年から高学年の児童を対象にした作戦です。今回は三年生の子どもたちを対象に実施しました。

《用意するもの》
絵本『どうぶつさいばん ライオンのしごと』(竹田津 実・作 あべ弘士・絵 偕成社 2004年.9月)
有罪、無罪、とかいたA4程度の大きさのカード人数分
《本の内容》
ライオンがヌーを襲って食べてしまいます。食べられたヌーの仲間がライオンを訴えます。ライオンとヌー両方に弁護士がついて裁判がはじまります。裁判の始まりの合図で草原の動物たちがコビエの丘のイチジクの木の下に集まってきます。
裁判長は、ハイラックス、ライオン、ヌー両方から証人がたって、意見を述べます。殺されたヌーは子どもが好きで、自分のことより、子どものこと考えていたこと。
しかし、ヌーはすこし様子がおかしかったこと。ライオンやハイエナのために、インパラは数が増えないが、ふえなからみんながたべていけること、病気が発生し、広まってしまうと群れ全体が死んでしまうこと、病気になって、動きが弱ったものをライオンが襲って食べてくれる事などが順番に語られます。
いよいよ判決が言い渡されます。
さて、裁判長はライオンを有罪にするでしょうか? 判決は「無罪、ただし、親をなくしたヌーの気持ちはみんなわかってあげましょう。」というものでしsた。動物たちは、「いい裁判だった、」といって、帰って行きます。

《実践方法》
まず、読み聞かせをします。
そのときに、あえて、ハイラックスの裁判長が判決を言い渡す前で、読むのをやめます。
次にライオンの役とヌーの役になってくれる子を決めます。ライオン役の子とヌー役の子は前にでてきてもらい、他の子は質問役になって、ライオンやヌーに質問します。ライオン役、ヌー役の子は登場人物になりきって答えてもらいます。
ある程度、話し合いが進んだところで、「それでは、そろそろみんなにも有罪か無罪が決めてもらいます。」と呼びかけ、教室の前の机の上に「有罪」「無罪」と書かれた2種類のカードを用意します。子どもたちに、有罪だと思う人は「有罪」のカードを、「無罪」だと思う人は「無罪」のカードをとるように言います。
子どもたちは、有罪、無罪、それぞれのカードを挙げます。
「どうして、無罪が、有罪か説明をしてください。」と子どもたちに投げかけて、自分の意見を有罪、無罪カードの裏に書いてもらいます。その際に周りの友達と話しあってもいいことにします。もちろん、途中で無罪、有罪と変わった場合は、カードを取り替えてもいいことにします。少し時間をとってから、自分が書いた意見をもとに、友達同士で意見を交流し合います。
それぞれの理由を出し合った後で、、もう一度、有罪・無罪カードを挙げてもらいます。
最後に、本の最後の部分を読んで、裁判の結果を知らせます。

《注意点》
本を読んだことのある子どもがいたら、裁判の結果について友達に知らせないこと、もし、自分だったらどんな判決を出すかを考えようと助言します。
《実践をおえて》
子どもたちは、はじめライオンが命を奪う事にに反感を覚えたようです。「ライオン役になってくれる人」と言っても、ライオン役になる子は少なく、自分達自身が、他の動植物の命をもらって生きていること、食べるもの全てに元は言えば命があったことに気づきいていないようでした。ライオンやヌーに質問しあったり、有罪無罪のわけを考えたりするなかで、やっと、生きることは命をいただくことであることに気づいたようです。最後には、ほとんどの子が「無罪」のカードを挙げました。本の終わりを読んであげると予想通りだったためか、ほっとした雰囲気になって、お話をきいていました。 作者の思い(主題)に気づくためには、一度読むだけでは無理のようです。じっくりとお話に出てくる証人の言葉を考えることが大切になります。そのために時間をとってじっくりと話し合いをする時間を確保すること、何よりも本を読んだ後にじっくりと考える習慣が必要だと思いました。
最後に、環境問題をテーマにした同じどうぶつさいばんの第二作『どうぶつさいばんタンチョウは悪代官か?』(竹田津実・作 あべ弘士・絵 偕成社2006年4月)を紹介し、人間が保護したため1000羽にも増えたタンチョウヅルの話を紹介しました。