学校図書館における「漫画」の選定と資料収集について

川崎市立白幡台小学校司書教諭 渡部康夫


 社団法人全国学校図書館協議会の機関誌『学校図書館』2008年12月号に、「まんがについて」原稿を寄せました。

 以下にその文章を紹介します。

 なお、12月号は、「図書資料の選択」を特集しています。

 内容としては、以下の論文が収録されています。

学校図書館における「選書」―図書資料の選択を中心に・渡辺重夫 15
司書教諭、本選びのノウハウ・松井功 21
バランスのとれた蔵書構成を目ざして・中村貴子 23
子どもたちの知的好奇心に対応できる学校図書館を目ざして・杉戸直由 27
資料の先にある利用者を見据えた選書・飯田勝彦 29
未知の世界を生徒に示す選書に心がけ・松田素子 31
【ジャンル別・図書選択の留意点】
絵本の選択・熊倉峰広 35/漫画の選択・渡部康夫 36/ケータイ小説の選択・吉川百合子 37/ライトノベルの選択・小林功 38

資料として

全国学校図書館協議会図書選定基準 41


 「漫画の選択」

 漫画は、一本の線だけで何でもあらわすことができる最も便利で原始的な表現手段である。文章は、極力省略され、吹き出しという雲のような形の中に話し言葉が書かれ、誇張されたオノマトペ(擬音や擬態語)が場面をあらわす表現の一部として描かれる。
 そのような漫画は、ラスコーの壁画や、鳥獣戯画の例を持ち出すまでもなく表現のジャンルとして歴史的に成立しており、文章や絵画の前にある人間の持つ表現として最も原始的なものであると言える。その意味で、親しみやすく気楽に接することができる。それ故、漫画は、子どもの生活の一部となり、空気のような存在になってきたのである。
 その表現形態によって人間の持つ生命力や生き方や作者としてのメッセージを表現しようとする手塚治虫などの漫画家によって、漫画でしか表現できない独自の表現形態として確立されたのである。
 そのような漫画を学校図書館に受け入れるとすれば、それなりの選定基準があってしかるべきである。全国学校図書館協議会は、俗悪ことばを故意に使っていないか?造本や用紙が多数の読書の利用に耐えられるようになっているかなど、まんがのみにかかわる選定基準を設けている。
悪や不正を讃えるものになっていないか?戦争や暴力が賛美されるような作品になっていないか?など他のジャンルの本と同じ基準である。
 この選定基準を適用すれば、学校図書館に置かれる漫画はもっと多くなるであろう。が、実際には学校図書館に入っていない。それらの漫画は子どもたちの息抜き(娯楽)として考えられ、学習を阻害するものとして認識されることが多いからである。学習漫画など知識を漫画で表現されたものしか、学校図書館に入れる事ができないのが現状である。
 考えるに、子どもたちが漫画を通して知識や人としての真実を学べるのであれば、さきの選定基準にあわせて、学校図書館として漫画を収集し利用に供するようにしなくてはならないであろう。
 スペインの公共図書館で、「はだしのゲン」の漫画が日本の原爆についてよく理解できるという話を聞いたことがある。私の見る限り、アメリカ・カナダやスペイン、フィンランド、デンマーク、スウェーデンでは、多くの日本の漫画が市民権を得ており、漫画が世界共通のメディアであることを痛感した。
 一方、点字でかかれた漫画や拡大された漫画本が特別支援学校で教材として使われていると聞く。調べ学習の本でも漫画を取り入れた図書が多く出版されている。国語の学習でも漫画を教材にした単元が見られる。今後、漫画の特性を使った学習教材の開発という点では、大いに可能性があるように思われる。
 漫画は、読者の支持によって育てられる。感動を与える事が出来るすぐれた漫画は確実に、歴史に残るはずである。


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