ユーライア・ヒープ

ブリティッシュ・ハード・ロックの超ベテランバンド

度重なるメンバーチェンジを繰り返しながら現在も一線で活動を続けるこの愛すべきロック・バンドとの最初の出会いは

1972年。当時中学生だった私は正木賢司という同学年の男と知り合った。この男がロック好きで、当時のミュージック・ライフ誌の裏表紙に掲載されていた
グレコのギターを弾く成毛滋の姿にしびれ、遂に同じグレコのレス・ポール・モデルのエレクトリック・ギターを買ってしまったという奴である
(その後ロックの世界には進んだのだろうか。この時以降全く連絡をとっていないのでわからない。正木君、もしこのHPを見たら連絡乞う)。
ある日彼から1枚のシングル・レコードが手渡される。それがUriah Heepというグループの「対自核"Look at Yourself"」だった。
そしていよいよそのレコードをプレーヤーにセットして針を降ろす。数秒後スピーカーから押し寄せてきた音の大洪水。
それまでフォークソングのファンだったせいで生ギター+オーソドックスなリズム・セクションによる演奏しか聴いていなかった私の耳にとって
「対自核」の音はあまりに凄すぎた。聴き終わってしばらくは言葉は出せず足腰立たず状態だった。
「世の中にはエラいモンがある」これが聴き終わった時の感想。

さて、件のシングル・レコードは後日正木君に返却(彼、まだ持ってるかなぁ?)。上記のとおりのUriah Shockをぶちかまされた私は返却したまま
治まるわけがない。小遣いをはたいて「対自核」を購入した。それもシングル盤ではなく、思い切ってLP盤を買ったのである。そんでもってこの時、
LP盤を買ったことで結果的に私はまた一つお勉強をすることになったのである。というのは・・・・

嬉々としてジャケットから30cmの円盤を取り出す。おっ、対自核は1曲目か、プレーヤーにセットして針を降ろす。
さあ、どっからでもかかってこんかい、対自核よ。来た〜、甦る衝撃、てなこと思っていたら・・・・

「ん?」

なんだこのフレーズは。シングル盤を聴いた時はこんなフレーズ出てこなかったぞ。どうなってるんだ、これは。
そして聴き進んでいく内にシングル盤にはなかったフレーズが出てくる出てくる。
タイトル曲「対自核」を聴き終わった後、私は喜びと同時に「どうしてシングル盤とLPの方でこんな違いがあるの?」という
ある種複雑な思いも残ってしまうこととなった。
「シングル用Edited Version」なるものの存在を知った最初の経験である。

ロック・バンドUriah Heepのサウンドの特色として、生声によるコーラス・ワークがある。これを大々的にバンド・サウンドの中に
取り入れたっていうのはたぶんHeepが最初だと思う。生声コーラスなんてクラシックとか歌謡曲やポップスのバックで使われるもの、と
決めてかかっていたのだが、それをハード・ロック・サウンドに見事に融合させてしまったのを聴かされてから、私は一も二もなく
Uriah Heepのファンとなったのである。

さてこのLP「対自核」、当時の解説書の執筆者の一人が先程話に出た成毛滋であった。解説文を読んでも十分わかりすぎるくらい、
そうとうHeepにホレ込んでしまったようで、後の成毛氏の音楽活動にも影響を与えてしまったようだった。
当時リリースされた彼のバンド「フライド・エッグ」のアルバム「Dr.シーゲルのフライド・エッグ・マシーン」には、Heepの影響が
モロに感じられる曲とかがあり、おもしろい。

というわけで、以上がUriah Heepというロック・バンドとの出会いの頃の思い出話である。
Heepはこの後(活動停止の期間はあったが)約30年に渡り活動を続けている。
これだけの長期間活動し、メンバーチェンジも何度もおこなわれていれば、必然的にバンドの音も時期によって違ってきている。
そしてファンにとって愛着のある時期とそうでない時期が出てくる(勿論全期に渡って好きという人もいる)。
私の場合はデビュー時の70年代初頭からDavid Byron(Vocal)とGary Thain(Bass)という既に故人となっている二人の不世出の
ミュージシャンが在籍していた頃
がやはり思い入れNo.1の時期である。Heepを初めて聴くという人に対する推薦曲も、
この時期の作品から選んでしまう。

この頃のHeepってやっぱりコーラス・ワークが凄い。他の時期でも勿論使っていたけど、この頃が一番コーラスに凄味があったように
感じる。推薦曲をいくつか挙げると

1.Poet's Justice

アルバム"Demons and Wizards"に収録されている。とにかくコーラスの
フィーチュア度でいえばHeepの曲中ピカ1だと思う。実は大昔、NHK-FMの何かの
番組で、コーラス曲特集みたいな内容の放送があり、いろんなジャンルの中から
コーラスが効果的な曲をセレクトして流すということで、ロック部門(?)として
この曲が取り上げられた、ということがあった。

2.Dreammare

1stアルバム"...Very 'Eavy ...Very 'Umble"に収録。個人的に1stの中で一番好きな曲。
"LaLaLaLaLa......"なんてコーラス、ハード・ロック・サウンドなんかとは無縁のフレーズと
思っていたのにこれだもん。歪んだギター、ハモンドの音に混じって
"LaLaLaLaLa......"。このフレーズを聴いた時、「対自核」を初めて聴いた時とは
また違う衝撃があった。ところがこの曲、私ゃこんなに気に入っているのにも
かかわらず、ベスト・アルバムとかに収録されたためしがない。CD時代になって
からHeepのベスト盤CDが数多くリリースされたのだが、この曲は滅多に入れて
くれない、可哀想な曲である。いい曲なんだよー。

3.Bird of Prey

2ndアルバム"Salisbury"のオープニング曲。実はHeepのコーラス・ワーク、凄いという
評判があったが、正直「対自核」を最初に聴いた時、それほどには感じなかった。
ところが「対自核」のヒット後、2ndアルバムが日本で発売され(ちなみに「対自核」は3rd)、
1曲目のイントロで炸裂するコーラスを聴いた時、やっとHeepのコーラス・ワークの凄さを
改めて実感した。"Salisbury"はHeepの全アルバム中私が一番好きなアルバムである。

4.The Shadows and The Wind

アルバム"Wonderworld"に収録。Gary Thain在籍最後のアルバムでもある。コーラスは曲の
後半〜エンディングにかけて登場。リード・ボーカルのバックという形ではなく、コーラス・ワーク
のみで進行していく。コーラスのフレーズを一つ一つ重ね合わせていき、分厚くさせていくという
手法。お家芸に対するこだわりを感じさせてくれる。

 

Uriah Heepサウンドのもう一つの魅力。それはバラード曲の素晴らしさである。
「対自核」の解説書で成毛氏も書いていたが、Heepって音のでかい曲は徹底的にでかいが、美しい曲はもう本当に美しく、涙が出るほどである。
Heepは1stから"Wonderworld"までの7作のアルバムにおいて、1作に1曲は必ずアコースティックなバラードを入れていた。
そのギャップ、徹底ぶりはすさまじく、バラード曲だけ聴くと、「このバンド、本当にハード・ロック・バンド?」と首を傾げたくなるほど。
そんなバラード曲は以下の通り

アルバム・タイトル

収録バラード曲

1

....Very 'Eavy ....Very 'Umble

"Come Away Melinda"

2

Salisbury

"The Park" "Lady In Black"

3

Look at Yourself

"What Should Be Done"

4

Demons and Wizards

"Paradise"

5

The Magician's Birthday

"Rain"

6

Sweet Freedom

"Circus"

7

Wonderworld

"The Easy Road"

どうしてこんな芸当ができたかといえば、もうひとえにボーカリストの故David Byronの実力の賜物である(注:"Lady In Black"のボーカルは別人)。
曲によってここまで声を使い分けられるDavid Byronのようなロック・ボーカリストってたぶんもう出てこないと思う。

 

 

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