は じ ま り

「今、制作中の地球交響曲第五番の中に出産シーンを入れたい。撮影を
お願いできませんか?」
 そんな話が舞い込んできたのは、2003年夏も終わりの頃でした。
 長い間お産を撮り続けているけれど、ムービーは初めてです。緊張と
不安と好奇心を抱いて龍村仁監督に会いに行った時、私は大好きな藍染
めの服を着ていました。
 一通りのお話をして10月末予定の出産撮影をお引き受けした後「西表
島に行きませんか?」とまたもや思いもかけないお誘いを受けたのです。
 3週間後、たくさんの撮影機材を載せて飛行機から船を乗り継ぎ、龍
村監督以下ガイアシンフォニー撮影チームが西表島に向かいました。
 映画のスチール撮影も生まれて初めての仕事でしたから私はかなり緊
張していたと思います。撮影地の紅露工房に向かう間、バスの窓を全開
にし亜熱帯特有の生暖かな風と匂いを思いっきり吸い込みながら、目の
前の景色を眺めていました。
 何はともあれ撮影は始まりました。緑に囲まれた工房の庭は全体が染
織の仕事場のようでした。そこに染め上がったばかりの色鮮やかな黄色
の布が掛けられていました。 石垣昭子さんの布と出会った瞬間でした。