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・重心の位置と安定が健やかな身体の基本・
 動作や姿勢維持には意識、無意識に関わらず軸があります。動作時に
は軸は場合によって可変ですが、姿勢維持や多くの動作の場合、軸は重
心線となります。重心線を本来あるべき位置に安定させることは、つま
り軸が安定しているわけで、身体に最小限の負荷をかけるだけで姿勢維
持や動作が可能になるはずです。
 二足歩行する人間の重心は非常に高い位置にあります。ですから重心
線は崩れやすいし、静止しているつもりでも微細に体は揺れています。
骨盤の状態等で揺れ方は3パターン程ありますが、要は転倒しないよう
に無意識に平均をとるべく微調整を行っているのです。直立を維持する
のは非常にデリケートな作業なのです。
 重心線にくるいが生じると(多くの場合前後のくるいが問題)、直立
を維持しようとして姿勢の変化が起こります。具体的には膝の屈曲や腰
の前屈、背中を丸くしたり顎を出して首を前方にもっていこうとしたり
といった微妙な無意識の変化です。こういう姿勢を常時強いられるとな
ると、前後左右の均衡した筋力バランスが崩れ、ある筋肉のみが必要以
上の仕事を強いられ疲労します。多くの筋肉の場合、疲労の次にくるの
は短縮とか硬化というものです。骨や関節、あるいは筋肉そのものに器
質的な異常がないのなら「凝り」といわれるものは、こうした筋疲労が
主要な原因です。
 ある筋肉の不具合はバランスや相補関係の観点から、他の筋肉の不具
合を誘発します。この関係は連鎖的に起こります。右肩が少し凝ってい
ただけだったのが、その内首の動きが悪くなり頭痛がするようになった。
それに近頃は左肩の凝りも感じてきた。背中が張って痛み出してくるし
呼吸が浅くなって以前に比べると疲れやすいような気がする。果ては腰
痛を感じ始めたし、太ももの裏辺りが痺れているような感覚がある。ふ
くらはぎが攣りやすくなったし、足の裏の疲労感がちっとも抜けない。
食欲もないし、時々胃が痛み出す。便秘がちになってしまった。何をす
るにも意欲が沸いてこない。・・・・
 こうして何処に出しても恥ずかしくない立派な、硬い、身体に遊びと
か余裕とか耐久力とかのない、健やかならざる人間が出来上がるのです。
 ほんの少し重心を補正してやれば(つまり姿勢補正を施せば)、バラ
ンス調整という意味から、出ていた顎は勝手に引っ込み、前傾していた
上半身がまっすぐ立ち、曲がっていた膝が伸び、特定の筋肉の負担が軽
減されて、身体状況が好転していくのは明らかです。
 重心を良好な位置に安定させるためにはそれなりの努力が要ります。
身体の構造的な歪みを正すのは勿論、補正した骨格構造を維持するため
に必要な筋力を養成し、自分の身体の癖や生活習慣と戦い、摂取する食
物に気をつける等々。
 つまるところ整体とはその時々の痛みや不具合に向き合うものではあ
りますが、第一義的にはこの一連の、最適な重心位置を維持するための
自助努力という流れの中の、側面援護的な意味をかなり濃厚に持ってい
るのでしょう。



・ストレッチ講習会雑感・
 ストレッチ講習会の時によく感じることを少々。
 まずストレッチを行うとき、大方の人が強く行おうとする傾向がある
という点が挙げられます。反動的な動きや極限まで筋肉を伸ばしきる方
が効果が大きいだろうという素朴な思い込みのためでしょう。これは筋
トレの延長上の考え方に違いありませんが、事ストレッチとなると話は
少し違ってきます。
 確かにストレッチには、強く反動的な動きを使うダイナミック(バリ
スティック)ストレッチと、そういう動きをしないスタティックストレ
ッチがあります。身体運動のパフォーマンスを短時間で向上させるため、
時に筋肉の一時的破壊を伴うようなダイナミックストレッチも必要な場
合もあるでしょうが、日常的なボディ・ケアという点からするとこれは
お勧め出来ません。また、ダイナミックストレッチは筋肉の<筋紡錘>と
いう感覚受容器に対する働きかけが強いため<伸張反射>という、反射的
に筋肉を縮めようとする作用を引き出してしまう場合があります。こう
なってはストレッチする前より筋肉が縮まり、筋長が短くなってしまい
ます。
 また、神経の相反抑制効果を狙う意味で自分で動かせる限界域を、無
理に越えない位置にポジションをとってストレッチを行うのが理想です。
要はストレッチ時の意識を筋トレ時の意識と混同しないようにというこ
とです。ストレッチは快適に行うべしということです。
 あと、アイソメトリック・コントラクション時に息を止めないように
します。運動はすべからくエアロビクスで行うようにしましょう。



・冷やす? 温める?・
 よく聞かれることですが、身体に不具合があった時、自分で処置をす
る場合、患部を冷やした方がいいのか温めた方がいいのか、まず迷うと
ころです。冷やすべき段階で温めたり、温めるべきものを冷やしてしま
ったりすると痛みが強くなる場合があります。
 基本的に急性期は冷却、慢性期は温めると覚えておきましょう。
 急性期と云うのは受傷してすぐの時で、明らかな炎症反応のある時で
す。発熱(患部が熱を持っている)・発赤(患部が赤くなっている)・
腫脹(腫れがみられる)・疼痛(疼くような痛みがある)・圧痛(押す
とその部位がかなり痛い)・運動障害(動きにくい、或いは動かない)
と云った徴候がみられればそれは急性期と判断して患部を冷却します。
急性期は鎮痛姿勢をとって安静にし、患部を圧迫固定し、出来れば心臓
より高い位置に上げておきます。尚、痛めたすぐでも炎症反応がみられ
なければ、特に冷却の必要はないでしょう。
 患部周辺を冷却すると毛細血管が収縮して炎症の拡大を抑制し、可逆
性神経生理作用(神経伝達の感度や速度が鈍る作用)による鎮痛効果が
あります。冷却は0〜−4°程度で冷やすのがいいと思われます。また
一回の冷却は20〜30分程度にします。
 急性期は発症から3〜4日です。炎症が落ち着いてきたら後は慢性期
です。痛みは残っているものの鋭い疼くような痛みからは解放され、運
動機能が回復してきます。こうなった後は冷却は禁物です。
 慢性期は温めます。皮膚表層だけを温めても効果は薄いので、身体の
深部に熱を届けるような温熱療法がいいでしょう。そのためには蒸気の
出るものを用いる方が効果的です。入浴とか、蒸しタオルを使用するの
がいいでしょう。温めると毛細血管が拡張し血液が不具合部に多く送り
込まれ、組織修復が促進されます。炎症期の冷却が消極療法なら慢性期
の温熱療法は積極療法と云えます。身体の不具合を元に戻す作業です。
 温めると同時に、運動療法によって固まった柔部組織(筋・腱)の柔
軟性を取り戻し、運動可動域を広げるように心掛けます。
 まあ、冷やす、温めるの判断の一般的な基準は以上です。


 


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