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2012.04.05更新 [誘導対策]
(更新履歴:目次下に掲載)
<UHV8導体ジャンパー線施工写真:加藤繁樹氏提供>
目 次
1.調査時点で行われた測量のチェック
2.工事用地の確保
3.工事用仮設道路・索道、仮設事務所等の建設
4.基礎工事
5.組立工事
(1)台棒工法
(2)クライミングクレーン工法
(3)移動式クレーン工法
6.架線工事
(1)防護足場の構築
(2)エンジン場、ドラム場の設置
(3)ワイヤ延線
(4)電線延線
(5)緊線
(6)架線工具
(7)誘導対策 New
7.付帯工事
8.工事用地の返地、後片付け
9.特殊工事工法
Coffee Break
(送電線建設の歌、解説付き)
更新履歴
| 更新年月日 | 更新内容 |
|---|---|
| 2005.06.17 | 本ホームページ開設 |
| 2006.09.03 | 目次・新設 |
| 2007.06.15 | 解説文を全面的に見直し修正 |
| 2007.12.25 | 送電線建設の歌、解説掲載 |
| 2008.04.27 | 特殊工事工法 掲載 |
| 2008.05.01 | 最近の超高圧工事写真を追加 |
| 2010.08.21 | 組立工事・台棒工法写真掲載 |
| 2010.09.07 | プロテクタ通過型延線車写真掲載 |
| 2011.11.22 | 架線工具掲載(金車) |
| 2011.12.03 | 架線工具掲載(カムアロング) |
| 2012.04.05 | 誘導対策掲載 |
建設工事施工は、送電線の詳細設計が完了し、必要な官庁許認可手続きなどを経た上、ルート用地の確保が出来た段階で開始される。
工事施工は概略次のような手順で実施される。
1.調査時点で行われた測量のチェック
2.工事用地の確保
3.工事のための仮設道路・索道、仮設事務所などの建設
4.基礎工事
5.組立工事
6.架線工事
7.付帯工事
8.工事用地の返地、後片付け
我が国の送電線は、ほとんどが北海道から沖縄までの10電力会社および電源開発株式会社(以下総称して電力会社という)の所有設備であり、その建設工事の発注は電力会社が行っている。
工事施工は送電線工事会社が電力会社から受注して行っており、電力会社で設定した仕様に基づき、工事会社の施工技術を発揮して行う。
送電線設備の多くは、人口密集地から離れた道路もない野山を越えて建設されている。
したがって、鉄塔および架線工事に要する膨大な資機材を、運搬困難な建設現場まで、効率よくかつ環境保全を考えて、どのような運搬方法によるか、が工事施工上の大きな課題である。
さらに、足場の悪い山岳急傾斜の鉄塔建設地点で、如何に安全に高構造物を建設するかも、工事計画上重要課題で、そこには送電工事特有の高度な施工技術が必要とされる。
また、ルートの送電線線下の構築物、横断物、樹木などに影響を与えず、電線を張る架線(がせん)技術は、送電線工事独特の特殊高度技術であり、こればかりは機械化・自動化に限界があり、熟練した架線電工の高度な施工技能と、施工会社の架線施工技術があってはじめて成し遂げられる。
昨今、全国的に電力会社の送電線工事の発注が減り大型工事が激減し、熟練電工の離散が多く、また、若い年代の電工就職希望者も少なく、架線技術・技能の継承が難しくなっており、これが現在の送電工事業界の共通の悩みである。
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ルートを調査した時点の測量データは、実際に建設する時点で再チェックする必要がある。
通常は調査から建設開始時点までの期間は短くて半年、大規模な送電線の場合には数年を要するので、その間にルート上の工作物、横断物、場合によっては開発によって地形・地目が、変化していることもあり、必ず再測量(検測)を実施する。
これは、二重チェックの意味もある。
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通常は、送電線路の支持物建設用地および電線が通過する直下の土地の確保は電力会社が行うが、工事実施に必要な仮設宿舎、仮設事務所、仮設資材置き場、仮設運搬路、工事施工のための一時使用用地など、工事施工に必要な土地は工事会社が地主と交渉し、一時的に確保するのが一般的である。
場合によっては、送電設備本体との関連で、部分的に電力会社が確保することもある。
すなわち、送電線路の許認可事項と一体になった土地の一時利用、あるいは仮設運搬路として仮設道路を建設したものを工事後にそのまま地主に引き渡すケースなどがその例である。
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工事実施に必要な仮設宿舎、仮設事務所、仮設資材置き場、仮設運搬路、工事施工のための一時使用用地など、施工に必要な土地を地主から借用し確保したところに宿舎、事務所、などを建築し、また、資材置き場を整備し、公道から各支持物建設地点までの間、あるいは公道から索道基地などの間に資機材運搬路を建設する。
工事に先立ち最も問題となるのは資機材運搬路であり、公道から各支持物建設地点までの間に資機材を運搬する方法として、大きく分けて、
A 仮設道路
B 索道
C ヘリコプター利用
D モノレール
の4つの方法がありその中から、経済的で工事がやりやすく、かつ現地環境に合った方法を選択する。
公道から離れ、かつ標高差のある地点に鉄塔を建設する場合には、資機材を運搬する方法としては経済的で工事がやり易いため、索道が最も多く使用される。

上図が送電線工事で最も多く使用されている複線式循環索道の概念図である。
索道支持物には、図のような鉄柱と下写真のような鋼管パイプ材が主に使用されている。

運搬する荷物は、搬器を用いて主索に吊り下げ、曳索で横移動させる。逆に荷卸場から荷積場に移動させる荷物は、復索に吊り下げ、曳索で横移動させる。
すなわち、荷積場で荷物を搬器に吊るし、搬器の握索器を曳索に締めて固定させ、荷卸場に移動させる。
吊荷が荷卸場ユニットに着くと、搬器は主索から自動的にハンガーレールに移行し、同時に曳索に締め付けていた握索器を解放し走行を止め、搬器から荷物を下ろす。
搬器はハンガーレールがU字形になっていて復索方向に移動できるので、そこで曳索に握索器を締め付ければ復索を走行させて荷積場にUターンさせることが出来る。
なお、荷積場ユニットのハンガーレールも搬器をUターンさせ得る構造になっている。
一般に索道の運搬重量制限は約20〜30kN(2〜3tf)で、それを使用する箇所の送電線の鉄塔部材、建設資機材などは、全て単体重量をそれ以下にするよう配慮する。

ヘリコプター利用の箇所については、ヘリコプターで運搬可能な重量(例:ベル 214B で20kN(2,000kgf)程度以下)に運搬物の単体重量を制限するように配慮する。
各鉄塔建設地点で借用する工事用地については、経済的見地および環境保全の観点から、極力狭い範囲にするよう設計するので、限られた範囲で如何に効率よく安全に工事を施工するか、事前に施工計画検討を行うことが大切である。

特に傾斜地の場合は盛土、カットを行わず、極力地表面は原形を保存するように工事を行う。
そこで傾斜地の場合には作業場として、京都清水寺の舞台もどきの、「作業構台」を設けて工事を行う。

最近は、山岳地工事で作業員の通勤運搬(人員輸送)と資機材運搬の両方を兼ねたモノレール設備を建設し、工事施工の効率化を図っている現場が次第に見られるようになった。
モノレールが開発された当初は、人員輸送を目的としたので、軽いものしか積載できなかった。
最近は、モノレールの性能が次第に向上すると共に重量物運搬時の安全性も高まり、以前は作業員運搬に限って適用していたものが、生コン、鉄塔材運搬など重量物の運搬にも使用可能となり、500KV大型工事の現場では導入を図る現場が多くなっている。

前述のように、各鉄塔建設地点における工事用地については、経済的見地および環境保全の観点から、極力狭い範囲にするよう設計し、限られた範囲で如何に効率よく安全に工事を施工するか、事前に施工計画検討を綿密に行っている。
しかし、500KV大型送電線等では、鉄塔根開きが10m近くになるものもあり、工事用地は一辺30〜40m、面積で1,000u程になるものもあり、鉄塔地点まで運搬された資機材を工事用地内で移動・運搬するのに専用のクレーンが必要になる。
このクレーンを「ジブクレーン」という。(右写真)
通常このためのクレーンは鉄塔中心付近に設置され、工事用地内のほぼ全域をカバーするようにするが、場合によっては複数のクレーンを設置することもある。
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支持物については、ここでは鉄塔に特化して説明する。
基礎の種類と概要は、別項の「調査・設計」にて解説しているが、そこで用いた基礎概要図を再掲すると右図のごとくである。

最も一般的で多数を占める支持物基礎は、各脚毎に土砂を一辺数mの四角形または円形で、深さ数m掘削して穴を掘り、鉄塔の脚部いかり材をその底面に据え付けて、鉄筋コンクリートで逆T型に脚材といかり材を包み込んで固め、掘削土を埋め戻し締め固めて完成させる基礎型(逆T字型コンクリート基礎)である。
このような基礎形体で、上方への引き抜く力、および下方への押さえつける力に対抗できる堅固な構造にするのが基本である。
すなわち、鉄塔1基当たり4つの基礎体が出来る。
地質の良い場所では、傾斜を付けて掘削すれば土留め材を使わず、土砂崩落の発生もなく、最も経済的に施工が出来る。
穴を掘る方法は、ツルハシ、スコップなどの工具を用い人力で掘ることもあるが、最近では小形の掘削機を用いるのが一般的である。
掘削機を運搬する道のない現場では、分解して索道で運搬したり、ヘリコプターで運搬するなどの方法で掘削機を用いることがある。
地質が軟弱で穴の周りの土砂が崩れるような場所では、予め穴の周りに鋼の矢板などを垂直に打ち込み土留工事を施工して、その内側を垂直に掘る。
さらに地質の軟弱な場所では、基礎体が沈み込まないように、地盤が固い層まで杭を打ち込み、杭の上に上記の基礎構造物を載せる(杭基礎)。
この場合は、杭を地上で「杭打ち機」で打ち込んでから基礎本体を掘削するが、掘削した部分に突き出た杭は基礎床版面でカットし、そこで基礎体と杭を一体化させる。
杭は、メーカー工場で製作した鋼管杭、鉄筋コンクリート杭を使用するほか、現場で垂直の穴をあけてそこに鉄筋とモルタルをいれて現場で杭を造る「場所打ち杭」工法も最近では多く用いられている。
地質が良い場合は、鉄塔の脚毎に独立した4つの基礎を造るが、軟弱地質なため経年変化で僅かでも基礎の沈下が懸念される箇所は4つの基礎をつなげて一体化し、各脚の不等沈下を防止する(マット・べた基礎)。
逆に硬岩など極めて固い地層の場所では、発破をかけながら掘削することもある。
さらに岩に基礎体から横方向に放射状に細長い穴を何本もあけ、鋼棒を入れてモルタルで固定し、岩そのものを基礎体として利用し基礎本体のボリュウムを小さくすることも行われる(アンカー基礎)。

急傾斜山岳地などに建設する大型鉄塔の基礎は、急傾斜のため通常の逆T型基礎では基礎上面の土量が十分確保出来ず、十分な引き抜き耐力が確保出来ない。
そのような箇所では、垂直に円形断面の深い円筒形の穴を掘って上方への引き抜く力に対抗出来る基礎としている(深礎基礎)。
この基礎は円断面・筒形(直径数m、深さ数m〜数十m)で、鋼製ライナープレートを使用し、ライナープレートの高さ分だけ掘ってはライナープレートを挿入し、土砂崩落を防止しながら掘削する。
通常は掘削した穴に鉄筋と生コンを入れ、鉄塔脚材を包み込み固めて完成させる。
深礎基礎の掘削は、穴の中に人が入って掘削する方法と、最近では全自動掘削機を用い人は穴に一切入らず掘削する工法も開発されている。
急傾斜山岳地などに建設する鉄塔の敷地は、土砂崩落防止および環境保全の観点から、カット・盛土をせず極力現地盤のままとする。
このため、大型鉄塔では4脚の基礎施工面の高低差が10m以上になることもあり、ジブクレーンの配置を含め基礎施工方法を十分に検討する必要がある。
基礎工事で、施工安全面から最も重要なのは、土砂崩落を防止することであ。そのため土留め工事を十分検討して設計するとともに、何にも増まして設計通りに施工することが求められる。
また、技術的にはコンクリート打設の管理が最も重要である。
すなわち、鉄塔工事現場は公道から離れた場所が多く、生コン工場から鉄塔地点まで運搬するのに時間がかかることが多い。
運搬手段もミキサー車が直接鉄塔地点まで行けるとは限らず、途中から索道、モノレール、ヘリコプター等に積み替えて運搬せざるを得ないことがある。
したがって生コンの打設完了までの制限時間、2時間以内(気温25℃を超えるときは1.5時間)に如何に効率よく運搬するかを綿密に検討し、コンクリート品質を確保する方策を十分検討しなければならない。
なお、基礎工事の工事期間は、規模の大小で大きく変化するが、鉄塔1基当たり1〜6ヶ月程度である。
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支持物、ここでは鉄塔に特化して説明するが、その組立工事工法は10種類以上あり、その中で現在多く使用されている、
・台棒工法
・クライミングクレーン工法
・移動式クレーン工法
について説明する。
(1)台棒工法

木製または鋼製の棒(台棒といい、長さ15m程度)を用いて、鉄塔を組み上げていく工法である。
台棒の下端を鉄塔主柱材に、回転および起伏ができるように取付ける。
台棒の上端に、起伏用支線1条および振れ留め用支線2条、計3条を取り付ける。
さらに上端に滑車(金車、「きんしゃ」)を取り付けそれにワイヤロープを通し、鉄塔部材をつり上げる。
台棒を、鉄塔部材組み上げ中の頂部付近、主柱材の内側に取り付け、次に組み上げる部材を吊り上げ、既に組み上げた部材の上部にボルトで接続する。
主柱材および4面を構成する斜材などを組み上げ後、台棒を再びその頂部にせりあげ、次々に鉄塔部材を組み上げていく。
この工法は、比較的小さい軽い鉄塔に適している。
木製台棒は、鉄塔根開き(鉄塔の地上部の一辺の長さ)が約10m以下、部材単体重量が約5kN(500kgf)以下の鉄塔に適する。
鋼製台棒は、鉄塔根開きが約15m以下、部材単体重量が15kN(1500kgf)以下の鉄塔に適する。

上図で説明した鋼製台棒を実際に使用している工事写真である。
詳細に見て貰うと、下方には昇降用踊り場が完成状態で設置されていることでお分かりの通り、本写真は鉄塔組立工事ではなく、鉄塔撤去工事の写真である。
組立も撤去もその手順が逆になるだけで、適用する台棒のセット方法、安全対策等は全く同じである。
(2)クライミングクレーン工法

クライミングクレーンは、鉄柱頂部にジブ(ブーム)を備え、旋回、起伏、巻き上げが出来るクレーン機能を設置し、下部には鉄柱せり上げ用機構を設置したもので、組み上げた鉄塔部材に水平支線を取って支えながら組立作業を行うものである。
組立する鉄塔の中心にクライミングクレーンを設置し、まず自立した状態(10〜20m)で鉄塔部材を2節程度組み上げる。
次に組立終了した部分の鉄塔材に水平支線(鋼ワイヤ)を取り、それで支え、クライミングクレーン主柱(鉄柱)を上方にスライド(8m程度)させる。
その下部に鉄柱を挿入し、クレーン高さを高くし(嵩上げし)、再び組立作業を行い、尺取り虫のように上方にクレーンを持ち上げつつ組立をしていく工法である。
性能は、「最大吊り荷重×作業半径」で表し、その値が約300〜600kN・m(30〜60tf・m)のものがある。
また、高さは、100〜200mまで作業可能である。
送電線鉄塔は、大部分が公道から離れた場所に建設されるので全ての建設用資機材は、運搬し易いように考えられており、全体を極力軽量化し分割したときの単体重量を約10〜20kN(1〜2tf)以下に抑えるようにしているのが特徴であり、クライミングクレーンもその例外ではない。
この工法は、鉄塔の中心に約1m幅のクレーン主柱材が貫通するので、鉄塔頂部塔体幅がそれ以上ある大型鉄塔に向いており、超高圧以上の送電線に多用される。
写真、左は全景写真、右は頂部のクローズアップ写真である。
(3)移動式クレーン工法
鉄塔建設地点が公道近くであったり、離れていても仮設道路を作って自動車が進入出来るような場所では移動式クレーンが適用可能である。
この工法は、クライミングクレーン工法のような現地での準備および後片付け作業がほとんど無いので能率が良く、短期間で組立作業を終えることが出来る。しかし、広い工事用地が必要となる。
移動式クレーンは、
(A)トラッククレーン
(B)ホイールクレーン
(C)クローラクレーン
に分けられる。

(A)トラッククレーンは、町中をよく走行しているので見る機会が多いが、トラック車体の上に360°旋回可能なクレーンを搭載したものである。
ジブ(ブーム)の駆動には油圧式と機械式(ウインチとワイヤロープ使用)があるが、油圧式の10〜40tf級のものが多用されている。なお、大型のものは機械式で200tf級のものもある。
(B)ホイールクレーンは、ゴムタイヤの付いた2つの車軸を持つ下部走行体に旋回機構を乗せたもので、クレーンの操作と走行操作を同一の運転席で行う。
その特徴は、不整地、狭隘地で作業性が良く、どの旋回位置でも吊り上げ可能で、吊り荷走行が可能である。多用されるのは50tf級のものである。
(C)クローラクレーンは、 クローラ(キャタピラ)を装備した台車にクレーンを装置したもので、クレーン操作と走行が同一の原動機で出来る。クローラの幅が広いので軟弱地盤および不整地でも安定性が良い。多用されるのは50tf級のものである。
移動は速度が極めて遅いので自走させず、別のトラックに乗せる。

組立施工上のポイントは種々あるが、急傾斜山岳地などに建設する鉄塔の敷地は、土砂崩落防止および環境保全の観点からカット・盛土をせず極力現地盤のままとするため、大型鉄塔では4脚の基礎施工面の高低差が10m以上になることもある。
特に、4脚のうち最もレベルの低い脚は地盤高低差以上の位置まで単独で組立施工するため、部材たわみの防止を含め、現地地形に合わせた施工方法を十分に検討する必要がある。
右写真のような、長大片継ぎ脚にあっては、相手の主柱材(脚材)との間を結ぶ最下節水平材を施工するまでの間、組み立てた主柱材(脚材)は不安定な状態で自立させねばならないので、そのトップにワイヤで支線をとり、また、写真には無いが必要に応じて中間点からも支線をとったり支柱を設けて、部材のたわみ及び変形を防止する工法が採られる。
なお、左サイドの鉄柱がクライミングクレーンで、最下部の黄色い部分がクレーン鉄柱せり上げ装置である。
なお、鉄塔組立工事の工事期間は、規模により大幅に異なるが概略10日〜3ヶ月程度である。
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鉄塔と鉄塔間に電線を張る工事を架線(がせん)工事というが、これは送電線独特の工事で、長年の経験と創意工夫で安全かつ環境に適合した種々の工事工法が開発され適用されている。
初期の頃には、電線も小サイズで軽量で、高低差のある山岳地でも大勢の作業員を集め、人力で電線を担ぎ支持物建設地点間を運搬し、支持物に吊して架線した記録がある。
現在では、機械化が進み、またコンピュータ化・自動化された架線工事システムが開発され、安全かつ高品質の工事が出来るようになった。
架線工事の工事期間は、規模により大幅に異なるが、概略1.5ヶ月〜6ヶ月程度である。
架線の基本的手順は、次の通りである。

(1)防護足場の構築
鉄塔間にある各種の工作物(道路、鉄道、電話線、送配電線、建造物、その他)、河川、保護すべき植物などに対し、延線中の電線が万一異常に垂下してもそれらの上部に触れないよう、防護足場(鋼管、鉄柱、鉄塔)を構築する。
(2)エンジン場、ドラム場の設置
鉄塔に電線を張るには、メーカーで製作した電線(1,000〜2,000m程度の長さでドラムに巻いてある)をドラムから引き出し、各鉄塔に持ち上げて張るが、地上を引っ張っていくのは現実には出来ない。
そこで、各鉄塔に滑車(金車、「きんしゃ」)を吊り、予めその金車にワイヤを張り、その末端に電線をつなぎ、それを一方で引いて金車上を通過させ、鉄塔10〜20基程度以内(3〜6km程度)単位に電線を張る。

まず、電線ドラムから電線を引き出す場所を確保するが、そこを「ドラム場」という。
また、架線ウインチを設置して電線を引っ張る場所を確保するが、そこを「エンジン場」という。
延線工事を行う区間毎(延線区間という)に、必ずこのドラム場とエンジン場を設ける。

エンジン場は主として架線ウインチ数台を置く場所が必要で数百u程度の面積でいいが、ドラム場は多数のドラムや延線車(後述)などを置くスペースが必要となり、1,000u以上の広い面積が必要になる。
(3)ワイヤ延線

架線工事は最初に、ドラム場とエンジン場の間に細いロープをわたす。
ドラム場で、その末端に太いワイヤロープをつなぎ、エンジン場で架線ウインチで引き、太いロープに置き換え(引き替え)る。
次に、ドラム場で、その末端に電線始端を接続し、その太いワイヤロープをもう一度架線ウインチで引き、電線を各鉄塔に吊っていく(延線する)。
具体的には、まず直径10〜12oのワイヤロープまたは直径14〜16oのナイロンロープを、延線区間を通して鉄塔の頂部に取り付けた金車に通して張るが、人力で運搬しながら張る場合とヘリコプターで張る方法とがある。

次に、このロープ(パイロットワイヤという)の末端に3本の10〜12oワイヤロープをつなぎ、同時にこの3本のパイロットワイヤを延線する工法が多く用いられる。
すなわち、1本は架空地線用、2本は左右上アームに配置し、電線用を引くためのパイロットワイヤとなる。
通常はこのロープでは直接電線を引っ張れないので、直径16oの太いワイヤロープ(メッセンジャーワイヤという)にそれぞれ引き替える。
このメッセンジャーワイヤに架空地線または電線を接続して延線する。なお、細い架空地線の場合には直接パイロットワイヤで引くこともある。
電線を延線中は、樹木および防護足場に接触させたり、地上に落下させないよう、一定以上の張力を電線に与えておく必要がある。
つまり架線ウインチで電線を引くとき、電線に一定張力を与えるブレーキの役目を担う装置が必要となるが、この装置を「延線車」といい、電線がドラムを出たところに設置する。
通常電線には、約10〜20kN(1〜2tf)以上の張力を掛けながら延線するので、その張力に耐え得る強度のメッセンジャーワイヤが必要になる。
上アームに張られたパイロットワイヤで上相電線を延線するには、まずパイロットワイヤをメッセンジャーワイヤに引き替え、そのメッセンジャーワイヤの端に上相電線を接続する。
同時にその接続箇所に中アーム用のメッセンジャーワイヤもつなぐ。
そして、上アームメッセンジャーワイヤで、上相電線と中アームメッセンジャーワイヤを同時に延線する。
続いて中相電線を中アームメッセンジャーワイヤで延線するが、その時下アームメッセンジャーワイヤも同時に延線する。
最後に、下相電線を下アームメッセンジャーワイヤで延線する。
なお、ワイヤー延線を上中下アームとも同時に延線する工法もある。
この場合は、上線アームに延線したメッセンジャーワイヤに、3本のメッセンジャーワイヤを接続し、3本を同時に延線する。
その3本のメッセンジャーワイヤは、上中下の電線をそれぞれ延線するためのメッセンジャーワイヤとなる。
上記で説明した、メッセンジャーワイヤ延線工事は、左右回線同時に行う。
(4)電線延線
各電線位置のメッセンジャーワイヤが、延線区間を通じて張られたら、ドラム場でその端末に架空地線または電線を接続し、架空地線または電線を延線する。

電線の延線は、鉄塔の最上部に張る電線から順次下方の電線を延線する。したがって、最初は鉄塔の最頂部に張る架空地線を延線する。
続いて、上中下の電線を延線するためのメッセンジャーワイヤの端に、各相の電線を接続し、上中下の順に順を追って電線を延線する。
上述のように、上中下アームメッセンジャーワイヤをすべて延線し、その後に上中下電線延線をする場合と、上、中、下相の順に「電線+下段メッセンジャーワイヤ延線」(下相は電線のみ)を順次行う工法がある。
なお、上線、中線、下線のそれぞれの左右回線の電線延線工事は同時に行う。
また、2導体以上の多導体では、水平位置に配置される2条の素導体の延線履歴を同一にするため、2条を同時に延線する。多導体送電線でも、左右回線を同時に行うため、「4条同時延線方式」が一般的である。
以上の手順で標準的な単導体2回線の電線延線工事が完了する。
延線速度は毎分40m程度が標準的な速度である。
以上、ごく標準的な延線手順を述べたが、電線を鉄塔に引き留める「引留金具(引留クランプ)」の種類、電線の導体方式(単導体、複導体)などによって延線工法は大きく異なり、送電線の設計・規模により、いろいろな効率的工法・手順が検討適用されている。
また、最近は径間毎に精密測量を行い、径間毎の電線実長を計算して、電線工場でその位置を電線にマークし、ドラムに巻いて出荷、現場ではマークに従ってドラム場で電線を切断し、引留クランプを圧縮取付け後に「プロテクタ通過型延線車」を用いて延線し、後述の緊線作業を大幅に効率化する「プレハブ架線工法」も開発導入され、架線工事品質向上に成果を上げている。
この工法をさらに進め、電線工場で各径間ごとに電線を切断し、引留クランプを圧縮取付けた後ドラムに巻いて現場に輸送し、現場作業を極力少なくすると共に、ドラム場の面積が狭くて済む、効率的工法も行なわれその成果が確認されている。

ところで、ACSR電線の場合、延線に当たって、メッセンジャワイヤに電線を接続する方法は、
●工事用延線クランプ(くさび型または圧縮型)
●圧縮引留クランプ(プレハブ延線用)
の何れかを用いる。
通常はドラム場で前者の工事用延線クランプを用いて接続し、延線車及び各鉄塔の金車を通過させて、所定の鉄塔に到着したところで、塔上でメッセンジャワイヤから切り離して圧縮引留クランプを取り付け、耐張がいし装置にセットする。
上述のプレハブ延線工法の場合には、ドラムから引き出した電線に工事用延線クランプを取り付けて延線車を通過させたところで、地上で後者のプレハブ延線用圧縮引留クランプ(クランプ端末の曲げ荷重を緩和するプロテクタ装着)に取り付け替えして、各金車上を通過させ所定の鉄塔に到着したところで、耐張がいし装置にセットする。
更に、大型多導体プレハブ延線工法では、工事用延線クランプ取り付け作業を省き省力化を図った工法として、上述の通りドラムから引き出した電線に直ぐに圧縮引留クランプを取付けし、あるいは電線工場で予め圧縮接続されたものに、いずれもプロテクタを装着し「プロテクタ通過型延線車」(右写真)を通過させて延線する工法が開発され、ドラム場の面積が狭くて済む利点を含め、一層の効率化が図られている。
なお、多導体の送電線に適用するため、同相の各電線の延線履歴(延線速度履歴、延線張力履歴、延線時間など)がほぼ同一になるよう、パソコンで自動的に延線機器をコントロールする、高品質の延線システムが開発され、延緊線作業の効率化に成果を上げた例もある。
(5)緊線
延線された電線を正規の弛度・張力に張ることを緊線(「きんせん」)と呼ぶ。
すなわち、台風襲来時の強風(高温季荷重)に対して電線張力が定められた値以上にならないように、また、厳寒期の電線着氷雪条件で季節風が吹いたとき(低温季荷重)にもやはり電線張力が定められた値以上にならないようにするために、各径間毎に緊線作業時の温度での電線実長・張力・弛度はいくらにすればよいかを計算し、その値で電線を張る。
なお、緊線作業は無風状態で行う。

右写真は、500KV・4導体送電線の緊線作業で、ターンバックルにより弛度の微調整を完了させたところである。
この後、弛度観測結果の報告を受けて、圧縮引留クランプの圧縮作業に取りかかろうとしている。
緊線作業で、正規の弛度張力になったか否かの確認は、支持物に電線を引き留める箇所の電線張力(支持点張力)を測定するか、径間の電線弛度を測定するかの2通りの方法があるが、後者の電線弛度を測定するのが一般的である。
当然、短い径間は弛度が小さく、長い径間は弛度が大きくなる。
当然のことながら、そのようにして張った電線は、高温季荷重時にも低温季荷重時にも定められた最大使用張力以内に収まる。
緊線工事の作業方法は、耐張がいし装置に電線を引き留める、クランプの種類で異なる。
圧縮引留クランプを使用する場合は、耐張がいし装置毎に電線を切断してクランプを装着し、耐張がいし装置を介して支持物に引き留める。
したがって、延線区間のうち任意の径間から順次緊線作業が出来る。
一方、ボルトで締めるOBクランプや楔式クランプを使用する場合は、電線を切断せず、緊線して余った電線をジャンパー線を施工した後、次の径間に繰り出していく。
したがって、延線区間の片方から作業方向を定め、順次進めていく。
延線作業から緊線作業をするまでの手順は、標準的2回線送電線の場合は、上中下相毎に延線したらすぐに緊線を行う延緊線作業を3回繰り返す場合と、支持物全ての電線を延線した後、緊線を行う場合の2通りの方法がある。
前者は多導体方式の超高圧送電線に主に適用され、後者は単導体の送電線に用いられる。
多導体送電線でのスペーサ取り付け作業は、緊線された同一水平位置の電線が風でぶつかり(ステッキング現象)電線素線表面を傷付けないよう、緊線後にすぐに行う。


2〜4導体では、簡易な手動式宙乗機にスペーサを載せ電工がそれに乗り、人力で径間を移動してスペーサを取り付けている。
また、同時に難着雪リングの取付も同時に行っている。
右側の写真は、2回線6相分の作業を6人にて一斉に実施している場面だが、残念ながら最上段の一人が画面に入らず5人しか写っていない。
なお、下部に吊されている網かごは、作業中の万一の落下物対策として、物を地上に落下させないための防護ネットである。

UHV・8導体の送電線では、スペーサの質量だけでも1径間あたり数100Kgになるので、ガソリンエンジンで走行できる自動式宙乗機を使用する。
右の写真は、100万V8導体送電線スペーサ取り付け作業の状況である。

右写真は、8導体用宙乗機のクローズアップ写真である。

なお、がいし装置の吊り上げ作業および支持物への取付作業並びにジャンパー線施工については、緊線工事の中に含めて施工している。
右写真は、275KV、2導体送電線のジャンパー施工状況を撮ったものである。
(6)架線工具
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(7)誘導対策
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既設送電線の建替工事の場合には、同一ルートに建て替える場合は事前に既設設備を撤去し、別ルートに建て替えの場合は事後に既設設備を撤去する工事を付帯工事として行う。
また、弱電流電線路に対して静電誘導対策や電磁誘導対策が必要となる場合は、送電線運転開始前に対策工事を完了させる。
さらに航空障害灯などの設置工事も、送電線運転開始前に工事を完了させるが、それらは付帯工事として実施することもある。
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工事施工で使用した用地は、後片付けを丁寧に行い、原則として原形復帰をして、工事で使用した小さな工具、材料の切れ端などの金属類については、特に注意を払い回収し、工事完了後速やかに地主に返地する。
特に農地の場合には農耕作業に支障となるような工事残存物が絶対に残らぬように慎重に後片付けを行うことが重要である。
なお、農地については、表土を予め表土以外の土と別に仮置きして、返地に際しては元通りに表土を敷くなどのケースもある。
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送電線の経過するルートは、地形的には峻険な山岳地から海岸に近い平坦部まで、また開発の程度は殆ど人の手が入っていない自然豊かな土地から大都会の人口密集地まで、極めてバラエティに富んだ地域環境の中を経過している。
したがって、線路設計はそれらの環境に合わせて特殊な形状が必要となる場合が多く、多種多様の形状の線路が建設されている。
さらに、それらを建設する工事工法も、必然的に多種多様にならざるを得ず、安全面および経済面などをも考慮して、標準的工法に加えて、現場環境に適合した各種の特殊建設工法が考案されて適用されてきた。
また、当然、設備の高電圧化・大型化の進展もあって、時代と共に高度な技術を駆使した複雑な工法が編み出されてきた。
なお、考案された工法が、初適用された時点では特殊扱いされたものも、時代と共に標準的工法として一般化されているものが多く、「特殊」と「標準」の区分けは必ずしも固定化したものではなく、時代と共に変遷していく。
工種別に主な例を各一つ挙げれば次の通りである。
工種 特殊工法例 解説 基礎工事 場所打ち杭工法
○工場で製作した杭をを使用するのではなく、現場で杭を製作するもので、地面に縦穴を空けて鉄筋及び生コンを充填し杭を形成する工法である。
縦穴を空ける機械・工具、掘削土砂の搬出方法、穴の側壁崩壊・防護対策などにより特殊な各種工法がある。
(基礎工事については、通常、設計と工法とが一体化していて、工法だけを特殊扱いとして論ずるのが難しい面がある。)
組立工事 鉄塔嵩上げ工法
○鉄塔下部に嵩上げ用機械をセットし、既設鉄塔の最下部または中間に新規部材を追加する工法である。嵩上げ機械の構造、性能などを追求し、各種のものが開発されている。
(既設の基礎をそのまま使用する場合と、外側に新規の基礎を建設する場合とで大幅に工法が異なる)
○既設鉄塔上部に、既設鉄塔を包み込む形で仮鉄塔を組み立て、仮鉄塔を利用して鉄塔上部をつり上げて下アーム箇所に新規部材を追加する工法がある。
架線工事 吊金工法
○主に既設の電線を張り替えるときに使用する工法である。
電線が絶対に外れない構造の小型金車を、一定間隔でロープに上下に1個ずつ対になるようコードで固定し、上部の金車を既設電線に通してロープをカーテンのように径間に張り渡す。その時、下部の金車には別のロープを通しておき、そのロープ端に張り替え電線(新設電線)を繋ぎ引き替える。
(表下部の写真参照)
続いて、引き替えた新設電線を仮緊線した後に既設電線を引き抜き去り、吊金ロープも撤去し本緊線する。
この工法は、作業中の延線電線等が絶対に地上に落下しないので防護足場が不要となり、安全かつ経済的な工法であり、吊り金車の構造、詳細手順等に独自の工夫・開発をした数多くの特殊工法が編み出されている。

最近は、特に地域の発展・都市化の進展に合わせて、建設当時は郊外であった地域環境ががらっと変わり、ルートが住宅密集地になってしまうなどの地域事情から、既設の送電線を構造変更・改修せざるを得ないケースが多くなっている。
このような理由から、基礎、組立、架線のそれぞれの工事工法とも、多くの特殊工事工法が考案されているが、本サイトでは工事写真が入手出来たものについて掲載していく。
(1)架空ケーブル適用による無停電鉄塔建替工法
前述のように、最近は、都市化の進展に伴い、建設当時は郊外であった地域環境ががらっと変わり、ルートが住宅密集地になってしまうなどの地域事情から、既設の送電線を改修せざるを得ないケースが多くなっている。
特に、線下に住宅が建設されたために、電線地上高を高くすることが必要となるケースが多い。
この場合には、鉄塔を同一位置で高いものに建て替えて電線地上高を高くする(嵩上げする)こととなるが、鉄塔の周囲には住宅が密集して建設されていて、鉄塔建替工事中に仮工事(仮線路を別ルートで建設)により送電を継続させておくことが出来ないことが多い。
したがって、鉄塔建替工事中は、活線では工事が出来ないので、線路を長期停止するか、または、垂直配列2回線送電線であれば、左右の回線を交互に長期停止しながら、工期は長期化するものの特殊な鉄塔組立工事工法を適用して、充電部接近作業を慎重に行い、高い鉄塔に建て替える工法が採られる。
どちらの場合も、長期停電あるいは片回線停電が伴うので、停止困難な線路では工事実施が難しいことがある。
しかし、当該鉄塔周囲だけ、局部的に架空ケーブルを使用して工事ができれば、送電線通電状態でも工事中は充電部接近作業も無しに安全に工事が出来て、かつ短期間に建替工事ができるので、停止が難しい線路にあっては好ましい工法と言える。
以下に、架空ケーブルを適用した66KV送電線の鉄塔嵩上げ工事(包み込み工法)を見ることが出来たので紹介する。

嵩上げを行う鉄塔に架空ケーブルを架線したところを正面から撮った写真である。
この写真では架空ケーブルの架線状況がわかりにくいので側方から撮った下記写真で順次説明していく。

まず、鉄塔嵩上げ工事を行う作業空間より十分遠方までの間に、片回線交互停止して架空ケーブルを架線する。
(手前に配電線が写っていて目障りだが、ご容赦いただきたい)
具体的には、電線引留クランプを、ケーブルと接続する位置まで、老番側及び若番側とも径間中央方向にずらして設置し、耐張がいしをその塔体側にセットするとともに、塔上に引き上げたケーブルヘッドと架空電線を接続する。
ケーブルヘッドは、耐張がいしの下部で金具により固定し、ケーブルは架空電線にハンガーで固定して電線振動により損傷しないように架空電線に添わせて取り付ける。
この作業で、塔体周囲から組立工事における危険な充電部分が排除できる。

架空ケーブルは、電線メーカー工場で汎用的な長さのものを製作し、予めケーブルヘッドをセットして現場に持ち込まれる。
現場でのケーブル切断・接続作業は一切出来ないため、現場毎に異なる長さの調整は、写真で見られるように、塔体部分で余った長さのケーブルを輪にして保持している。
この状態で、鉄塔嵩上げ作業を行う空間は、送電線通電状態でも充電露出部分は一切なく、安全に作業が可能である。
ただ、ケーブルを損傷しないように作業することが重要であり、組立工法・手順(使用機械工具等)について個々の鉄塔毎に慎重に検討することになる。
この後、この鉄塔の外側に新しい鉄塔を組立していく。
なお、基礎は、既設基礎の外側に新設基礎工事を行い、既に工事完了させている。

右写真は、ケーブルヘッドのクローズアップであるが、このケーブルヘッドは取り扱いに便利なように磁器ではなく、ゴムモールドが使われているようだ。
ケーブルヘッドとケーブルの接続点から出ている緑色の電線は、ケーブル内部の状態を常時監視するためのセンサと測定器の間を接続するリード線であろう。
ちなみに、この送電線の電線は、ACSR100muが使用されている。

送電線充電状態で包み込み工法により、既設の鉄塔の外側に新設の高い鉄塔が完成したところである。
組立作業員は、充電部接近作業が全くないので、安全に作業が出来、作業効率が高まっているように感じられた。

写真で見て奥側、ルート水平角度の内側の回線を停止して、新設鉄塔に移線作業をしているところである。
(手前に配電線が写っていて目障りだが、ご容赦いただきたい)
作業している回線では、架空ケーブルは既に取り外されている。

いよいよ工事が終盤に近づいたところで、左回線が新設鉄塔に移線・架線され、完成したところである。
最初に掲載した架空ケーブル架線が完了した状態の写真が、2005年GWの連休中の5月2日に撮影したもので、右写真は5月26日に撮影したものである。
連休中の休業期間を除くと、鉄塔組立及び片回線移線作業に要した実作業期間は2週間ほどで、架空ケーブルを使用したために仮工事も不要で、短期間に工事が進捗したと言えよう。
その後、6月上旬には既設鉄塔を解体撤去し、工事を竣工させている。
なお、この架空ケーブル適用の工事は、ケーブルの絶縁強度および電流容量の点から、電圧66〜77KV、電流400A程度の送電線までが適用範囲であろう。
Coffee Break
基幹・大型送電線の建設は長期間にわたることが多く、建設工事管理・施工監理に従事する技術者たちは現地に工事事務所を設け、多くは家族と離れ単身赴任で工事完成まで現地で集団生活をするのが一般的である。
工事事務所は、プレハブで建設することもあり、また、既設の建物を借りることもあるが、現場技術者たちは職住共に共同生活をすることになる。
そんなときには、夕食時に酒を酌み交わして、苦楽を共にする仲間と歓談する時間が昼間の仕事の緊張をほぐし精神的なくつろぎを与えてくれる。
そこでは、いろいろな歌が自然に出るが、現場で実際に苦労を味わった技術者自らが作詞した「送電線建設の歌」というのが古くから歌われているので紹介する。
作詞者:中山秀雄氏(1916(大正5年)〜1989(平成元年))
(昭和20〜50年代、日本発送電株式会社および東京電力株式会社に勤務され、全国を股にかけて大活躍された大ベテランの送電線建設部門技術者)
在りし日の中山秀雄氏
曲:ズンドコ節
1.(測量)
バラや熊笹 踏み分け越えて
あの山この山 箱尺立てりゃ
風もなきます おいらも泣ける
次のお山は なお高い
解説
昭和30年代以前は、電力会社の建設工事担当者は、工事準備から竣工まで、工事施工業務を除き、ほとんど全ての業務を、自ら直営で行った。
従って、自ら、道なき山中を歩き回って、ルート選定、ルート測量などを実施し、現地を隈無く歩き、ルートを決め、支持物建設位置を決めていった。
当時の測量は、現在のGPS利用のデジタル方式ではなく、トランシットと箱尺を用いたアナログ方式であった。
しかし、現在では、ルート測量は、専門会社に業務委託するのが一般的である。
2.(準備)
稟議起案だ 認可だ許可だ
請負付託だ 資材の準備
出来る線路に 喜びあれど
小さい机が うらめしい
解説
昭和年代には、電気事業法に基づき、工事の規模に応じて、必要な電気工作物変更の許可、および建設工事が電気設備の技術基準に適合していることを、当時の通商産業省に申請し、大臣又は当該地区の通産局長の認可を得ることが必要であった。
しかし、現在では、電力会社が自主保安規定を作り、それに基づき工事を進めることで、その届け出業務は行うものの、工事の官庁許認可手続きは不要となった。
3.(据付)
泥にまみれて 据付すんで
ぐっとひとなで 玉汗拭いて
あすの天気を 見上げる空に
雲が流れて 晴れじゃろう
解説
電力会社が、工事施工会社に請負付託した工事施工業務は、当然施工会社の責任施工で工事を完遂させるが、後日に検査不能な重要箇所などについては、以前は、電力会社の監理員が、現場に張り付き、作業員と一緒になって、適正な施工に努めたものである。
鉄塔脚材の基礎底面への据え付け及び生コン打設工事とか、重要他工作物を横断する箇所の弛度観測及び電線圧縮接続作業など、がその例である。
4.(組立)
一段上がりに 組立すすみ
高いお空に お手々がとどく
腰のボルトと ケンスパなけりゃ
羽衣天女と フラダンス
解説
鉄塔組み立てが進行し、次第に高くなる鉄塔を監理員が下から眺めると、鉄塔組立作業員が鉄塔上を上下左右に、きびきびと、組み立て作業をしている姿が、誠に頼もしく感じる様子を歌ったものである。
なお、ケンスパは、剣先スパナの略で、メガネレンチの片側がとがっていてボルト穴に差し込めるようになっている工具である。
5.(延線1)
いまから捲くぞの 電話の声に
遠い山脈 田畑を越えて
のびる電線 日光に映える
無事にとどけと 手を合わす
解説
準備万端でも、緊張する一瞬である。
6.(延線2)
高い鉄塔に 春風吹いて
架線男の ひげ面なでりゃ
遠い故郷の あの娘を想う
想う途端に 赤い旗
解説
現在の延線工法は、全ての延線監視員に有線又は無線の連絡電話を持たせ、緊密な相互連絡の基に工事を実施するが、昭和30年代以前には、部分的に手旗信号を用いていた。
赤旗は、延線作業を緊急停止する合図である。
7.(緊線)
温度何度で 弛(たるみ)みがいくら
つけた水糸 にらんで決める
ここが見せ場の 緊線作業
腰のスパナは だてじゃない
解説
電線を正規のたるみで鉄塔に留める作業が、工事管理の中では、最も大切で、最も緊張する作業であり、電工の腕の見せ所となる。
「腰のスパナ」はモンキースパナのことで、武士の刀と同様、電工は何をするにも腰道具と言って、安全帯とモンキースパナとペンチは体の一部みたいなものとしてどのようなときにも離さないし、弛度測定の時にもその姿が確かな技術と相まって、頼もしく見えるということを歌っている。
8.(検査)
えらいお方が たくさん見えて
あそこここのと お小言くって
流す冷や汗 竣工検査
こんな苦労を 誰が知る
解説
工事竣工検査は、電力会社の自主保安規定に基づき実施されるが、昭和年代には、それに加えて、通産省の官庁検査があり、工事担当者は神経が最もピリピリする瞬間を迎えることになる。
検査は、工事区間の起点から終点まで、全ての工事設備に亘って詳細に行われるが、大規模工事では数日間から一週間もかかることがあり、工事担当者としては、その間緊張の連続で、愚痴の一言も言いたくなる心境になる。
9.(帰社)
出来た線路を 錦と飾り
帰る今日の日 夢にも見たが
かげで見送る 瞳の人に
肩の荷物が 重くなる
解説
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なお、『ズンドコ節』は、元々『海軍小唄』(かいぐんこうた)と呼ばれていたもので、戦地に赴く男たちの本音を歌った歌で、昭和20年頃に流行ったものであり、作詞・作曲者が不詳で著作権問題が発生しないため、多くの歌手によってリメイク版が作られているそうだ。
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