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中央ヨーロッパ スロバキアの穀倉地帯 UC0080 5月上旬
揚兵戦車 キュイ

「ようやくコシツェにも春がきた」

この辺りは四方を山に囲まれたコシツェの草原、

今も昔も、畑と原っぱと羊達しかいない

こんな辺鄙なところにも、驚いたことに宇宙戦争のなごりがある

ジオンの兵隊さん達の落し物だ


ジオンの兵隊さん達は、この羊が珍しいようで、

まるで好奇心の強い子供のような目をして、皆、怯えながらも頭を撫でていった

その屈託のない笑顔が、今では懐かしい



彼らが初めてこの町にやって来た日、

町の若い者達は、武器を手に持ち立ち上がろうと意気込んでいたが、

交渉に入ったジオンの若い将校達が機転を聞かせてくれ、一触即発の最悪の自体は回避された

町の自治に関して、基本的に今まで通りに我々に任せてくれたということもあり、

町の若い連中も武装放棄に従った


ジオンの兵隊達は、本格的な駐屯を始めてからも、終始、私ら住民にはとても友好的で、

クーデターを企てようとさえした私らを、気長に、その心が開かれるまで、

辛抱強く静かに待ってくれていたようだった

その姿には、TVでよく言われていたような粗暴の悪さなどはなく、

それどころか逆に非常に礼儀正しい、気持のいい男達が多かったように思う

町の復興はもちろん、灌漑作業や畑仕事にも、

彼らは持前の武器である戦車やロボットを惜しげもなく出して協力してくれた

お陰で前より住みやすい町になったと皆が喜んだものだ

その様子は、昔からこの地に語り継がれてきた旧世紀の侵略者

「モンゴル帝国」の征服の様を連想させた

モンゴル帝国は、征服した国の自治は従来通りの人々に任せ、

大いに繁栄するよう協力を惜しまなかったということだ

もっともモンゴル帝国は、このスロバキアまでは、

最後まで辿り着くことは出来なかったのだがね



あれから半年が過ぎた、

高地のコシツェにもようやく遅い春が来た


彼らは無事に、空に帰れたんだろうか?

 



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